アメリカのアフガン撤退

 この八月末で、アメリカ軍はアフガニスタンから完全に撤退した。すでに早く傀儡政権は崩壊し、大統領は国外に逃亡、予想よりも早く、タリバンが首都を制圧した後、空港に立てこもって撤退した占領軍の姿は、ベトナム戦争での最後に、サイゴンアメリカ大使館の屋上から逃げた姿を彷彿とさせた。

 9・11事件の報復と言わんばかりに、アフガニスタンに攻め入り、タリバン政府を倒し、アルカイダのビン・ラダィンを殺して、20年間侵略を続け、多くの住民を殺したこの戦争は、結局、元のアルカイダが全土を掌握して、米軍が全て引き上げるという結末で終わったことになる。

 米国の完全な失敗である。ある米国人に言わせれば、まだ「七世紀のような統治」のイスラム教の遅れた国に、アメリカが攻め入り、力尽くで「民主主義」世界を押し付けようとしたが、それは完全に失敗に終ったことになる。どこでもそうであろうが、その社会にはその社会の発展段階があり、そこへ全く違ったものを、外国が良かれと思って押し付けようとしても駄目だといことがよく分かった例ではなかろうか。

 タリバンについては、バーミヤンの仏像爆破や女性に蔑視、過酷な刑罰などと、西側諸国の評判は良くないが、今回の如く予想以上に早く全国を勢力下の納め、首都のカブールをも予想以上に早く制圧したことは、それだけ住民の支持が大きいことを示しているものであろう。

 今後タリバン政府がどのような政治をしていくか、いろいろ問題は山積しているであろうが、アメリカ軍の撤退により空爆や砲撃による住民の死傷者がなくなり、平和が回復されるだけでも、住民にとっては少しでも平和な生活が期待できるのではなかろうか。タリバンの勝利は喜ばしい限りで、アフガニスタンの国土の回復、人々の安全、生活の改善などが戻ってくることを願わないではおれない。