米軍のアフガニスタン撤退

 新聞の報道によれば、確か今月末までに、アフガニスタンから米軍が完全に撤退するそうである。もう既に、タリバンの勢力が国土の大部分を支配下におき、いくつもの州都も奪い、首都のカブールもやがて占領されそうだという。首都にあるアメリカ大使館も、それを見越して、脱出のためであろう首都から空港へ引き越すとか報じられている。ベトナム戦争の最後のサイゴン陥落の時を思い出すと、テレビで誰かが言っていた。

 こう書いていたら、もう急転直下、たちまちタリバンが首都を制圧し、ガニ大統領は国外に脱出、アメリカ大使館からは、サイゴンの時のように、アメリカ人がヘリコプターで逃げ出したようである。

 昔はアフガニスタンといえば、パキスタンとイランに接した内陸国で、一番目立たないような国だったが、2001年の9.11以来、アルカイダビンラディンアフガニスタンタリバンが匿ったとか言って、アメリカ軍が侵攻し、以来、世界で一番長い戦争と言われるぐらい、今日までずっと戦争を続けて来たのである。

 現住地が直接戦争に巻き込まれるとどうなるかは、沖縄戦でもよくわかるが、攻める方のアメリカ軍は次々に入れ替わってやって来るが、住んでいる住民たちは何処へも逃げられず、直接、住居を壊されたり、生活を破壊され、家族を殺されるなど、筆舌に尽くせない悲惨な目に遭って来た。

 一人の外国兵の死亡の背後に、百倍のアフガニスタン人の犠牲があることを故・中村哲さんが語っていた。その苦しみは最早、到底筆舌に尽くせるものではないであろう。

 それを20年もの間続け、散々荒らし回った末に、最後は目的も果たさないまま、荒廃した土地や社会を残して、後片付けもせずに、「はい、さよなら」と言って帰っていくのである。

 こんな非道なメチャなことが人道上、許されて良いのであろうか。アメリカはいつも何やら「勝手な正義」をかざして他国に侵略し、政府を倒し、国の治安をめちゃめちゃにして、目的を果たせなくても、自分の都合で引き上げたりしている。

 アフガニスタンだけではない。イラクの時は原爆を隠しているとの濡れ衣で、侵攻して占領し、サダム大統領を殺し、リビアでも反乱を起こさせて政府を倒した。シリアでは未だに戦争を続けている。もっと以前にはベトナム戦争のような大掛かりな戦争もあった。

 世界最大の軍事力を持ち、世界を支配するとするアメリカのすることには、面と向かって反対する国がないことをいいことにした、不法な諸外国への侵略行為は、いつの日にかは、必ずや、歴史の審判を受けることになるであろう。

 アフガニスタンの住民からすれば、こんな無法で残酷な運命に合わねばならない謂れはどう見てもない。かかる行為こそ、世界の名において断罪されるべきではなかろうか。