朝日新聞の日曜俳句欄に、下のような句が並んで載っていた。
老犬と一山越えし古希の夏 横浜市 桐谷篤輝
老二人何とか八十路初西瓜 大和郡山市 宮本陶生
なるほど70代と80代の違いがよく出ていて面白い。私の経験に照らして見ても、70代は古希だの、喜寿だのと言って、歳をとったとは言え、まだ大抵の人は元気で、犬を連れて山を越えて歩くぐらいは平気で、むしろ良い運動だと楽しんでいるようなことも多い。
ところが、80代になると元気だった人も、誰しも体力が衰え、最早若い時のようなきつい運動などは無理になってくる。ここまで生きて来たのだから、もう十分だ。老の仕事もぼつぼつ終えて、家で好きなことでもしながら、ゆっくり余生を楽しもうかいうことになる。
若い時からの親しい友人などが、お互いに懐かしくなったりして、時間のゆとりもあるので、時に、一緒に集まって旧交を温めたりすることとなる。ただ、帰り際には、また会う約束をして「まだ生きていたらね」などと付け加えることにもなる。
それならば、90代になるとどうなるのだろう。自分が90歳を超えるとよく分かる。70代、80代の句が並んでいると、ここになかった90代の句も、つけ加えるべきであろう。そこで一句、駄作であるが、
友逝きてひとり月見る卒寿かな
90代になると、もう親しかった友人たちも死んでしまって、ひとりだけ取り残されてしまうことになる。人生には限りがあるのだから仕方がない。いなくなった友人を思い出して、ひとりで寂しく、自然と向き合うことになる。それが80代と90代の一番の違いではなかろうか。
80代と90代の違い