折角あの戦争も遠くなったのに

12月18日の朝日新聞の歌壇・俳壇に

  引揚者が命つなぎし開拓の段々畑にあふれる芒

 「海軍さん」と呼びし老いらいなくなりそれより今はオリーブの島』

   (作者名忘却)

という2句が載っていた。

 あの戦争についての歌や句は、これまでに無数に載せられてきたが、時代を経るに連れて、戦争経験者も殆ど死に絶え、その歌や句も減り、子供時代の戦後の苦い思い出や、親や祖父母からの伝承の歌句に移ってきているが、こういった戦争に関する歌や句を見ていても、近頃では、戦争もようやく遠くなり、平和な生活の中に見られる痕跡となってきている感じである。

 戦争や、それに伴う悲惨な戦後を語り継ぐことは必要であるが、もはや戦争が歴史上のことになってしまったことは間違いない。戦前の私の子供の頃には、明治維新や日清・日露戦争は歴史上のことと感じていたが、もう現在では、明治維新から敗戦までと、敗戦から今日までが同じ77年という時代にになってしまっているのである。

 敗戦からこれまで、日本は平和憲法のおかげもあり、幸いにも、この間一度も戦争をせずに平和が続いてきたので、上記の様な歌も生まれてきたのである。一句目の様に戦後の混乱期さえ遠い昔のこととなったのである。 このまま平和が続いてくれたら国民はどれだけ幸せで有難いことであろうか。

 ところが、最近の政治情勢を見ていると、これまでは戦後のアメリカ従属の歴史を何とか上手く乗り越えてきたこの国も、中国の発展などの世界情勢の変化による、アメリカの反中国政策に乗せられて、いよいよ戦争の準備までさせられることとなり、平和な生活にも暗雲が立ち込めてきている。

 政府はアメリカに言われるままに、身分不相応な大量の兵器を買い込み、アメリカとの共同作戦で、敵基地への先制攻撃も辞さないというのだから恐ろしい。攻撃されれば、反撃されるのは当然である。戦争になるということである。最早、再び「兵隊が廊下の隅に立っている」時代になってきている。

 それも、今度は國体や天皇のためではなく、アメリカのためなのである。しかも、相手が日本の隣国であり、経済的に最も依存度も高い中国なのである。先の大戦では日本が侵略し、戦闘には勝っても結局戦争には負けた国である。その中国は今や経済、技術、軍事などの国力、人口、面積、何をとっても日本より巨大で、世界戦争で人類滅亡でも来たさなけrば滅ぼすことの出来ない国になってしまっているのである。

 それに、何よりも中国が近い将来日本に攻めてくる兆候は皆無なのである。どう見ても勝てそうにない、負けるに決まった戦争を再びこちらから仕掛ける馬鹿はいないであろう。中国との平和友好を発展させる方が、金もないのに大量の武器を買って攻撃するぞと脅かすより、遥かに賢明で正しい方法だと思うがどうだろう。

 平和に暮らせるほど有難いことはない。何とかして皆と一緒に平和を守っていきたいものである。