「お元気ですね」

 七十五歳を超えて、いわゆる後期高齢者の分類に入れられる頃にでもなると、いつまでも若い積りで来た人も、嫌でも老人を意識せざるを得なくなって来るようである。若い時はこうだったが、いつ間にか歳をとって、もう若い時のようにはいかない。歳並みにしなければなどと自分に言い聞かせることになる。

 上に掲げた八十一歳と十八歳に比較の文言は、いつだったか旅の途中に、どこかで見て面白いなと思った記憶があるが、たまたま最近Facebookだったかに載っていたので、ここに載せておいたが、これも八十一歳と十八歳の、大人のはじめとおわりの比較がなかなか面白いのだが、これが私の年の九十四歳と四十九歳の比較では全く面白くない。

 新聞を見ていても、最近はやたらと老人向けの本や広告が多いが、いわく「後期高齢者老人の生き方」 「老後に備えて・・・」「七十歳の正解」「七十四歳完全復職」「七十歳八十歳でとても幸せになる人、不幸になる人」「六十歳からの手ぶら人生」「やばい老になろう」「老の福袋」「老人初心者の覚悟」「八十歳の壁」「老後のピアノ」「老人と海」「おじいちゃんのバス停」「猫も老人も役立たずで結構」「老の品格」などなどやたらと多いが、いずれもまだ元気な70代、80代の老人を主な対象にしているようだ。

 これらの中で、一番年長者と思われるのが「八十七歳古い団地で愉しくひとり暮らす」というのがあったが、これすら80代である。最近気がついたのだが、老人と若者の引き合いに出される老人というのは七十歳代、八十歳代に人のことで、九十歳を超えるともうお呼びではないようである。

 ひょっこり出会った人たちの挨拶も、九十歳を過ぎているのを知ると「お元気ですね」という言葉が返ってくるようになる。80代ではまだ元気な人が沢山いるので、一見では「お元気ですね」とはならない。私も最近初対面の人からよく言われるようになった。いわゆる老人の範疇からもうはみ出してしまっているようである。

 どうも老人とは、七十代から八十代終わりぐらいまでを指しているようで、もうそれを超えると、もうその範疇に入れてもらえず、成れの果ての別格にされてしまうようである。

 ただし、最近は百歳を超えた人も多くなり、日常会話でも、「おばあちゃんが百六歳でまだ元気だ」とか「おじいちゃんがゃんが百三歳なのだが、ボケってしまって・・」とか言うような話を普通に聞くようになっているので、老の見方も今後はもう少し変わっていくことであろう。

 医学的にも長寿の秘密に迫ろうとしてセンチネリアン(100歳越えの人たち)の特徴などを調べている人もいる。現在の日本人の平均寿命がおよそ男は80歳、女は88歳ぐらいと言われているので、それにプラスアルファした当たりが老人とされるのであろう。それを超えてしまうともう例外扱いにされていくようである。