ぼったくり男爵とピンハネ男爵

 

  新型コロナウイルスへの懸念で、中止論が高まっている東京五輪を巡り、国際オリンピック委員会IOC)のバッハ会長が、五輪開催を実現するために「われわれは犠牲を払わなければならない」と述べたのが問題になったが、それに続いて IOCの幹部からも、「緊急事態が続いていても」とか「菅首相が反対しても」「ハルマゲドンでも起こらぬ限り」オリンピックは開催されるなどと繰り返し、日本国内から反発の声が上がり、主権が侵害されているのに政府はIOCに抗議しないのかと言う声も聞かれる。オリンピックはIOCが主催することになったいるが、IOCがコロナ流行拡大やその犠牲になる国民に責任を負うことができるわけではない。オリンピック開催権を持つ国際的な私的機関に過ぎない。

 しかし、世界のメディア、殊にアメリカの巨大なメディアに支えられているので、IOCの幹部などは豊かな財源に支えられて、まるで貴族のような振る舞いをしているといわれている。そんなこともあって上記のようなバッハ会長などの態度を皮肉って、ワシントンポスト「ぼったくり男爵」と呼び、「バッハ氏をはじめとする国際オリンピック委員会の金メッキ詐称者たちは、いつの間にか日本を自分たちの踏み台として扱うことにしたようだ。ぼったくり男爵ことIOC会長のトーマス・バッハの一行は、王族が旅の道中で地方の小麦を食べ尽くすかのごとく、ホスト国を破滅させる悪い癖がある」と言うような記事を掲げ、「ぼったくり男爵(Baron von Ripper-off)」と言う名前が一躍有名になった。

 バッハ会長がドイツ出身なので、「Rip off(ぼったくり)」をする人が「Ripper-off」と言うことで、そう名付けられたようである。

 こんな記事を読んでいたら、その後、やはりオリンピックに関して、今度は「ピンハネ男爵」というのが出て来た。「ぼったくり」があれば「ピンハネ」もあり、どうもオリンピックは稼ぎ時らしく、これで、いくらコロナが猛威を振るって多くの人が死んでも、オリンピックは止められないのだなと変に納得がいく。

ピンハネ男爵」とは、こちらは日本人で、竹中平蔵氏のことらしい。何でも彼が会長を務めるパソナグループの利益が10倍になったと出ていた。オリンピックの人材確保などの費用は先ずは電通博報堂ADK東急エージェンシーなどに丸投げされるらしい。ところが東京五輪に関する人材派遣は、すべてパソナが独占しているので、そのまま多額の口銭を取って、パソナのような人材派遣会社に下請けされ、それから更に次々と何段階も下請けに出される仕組みになっているらしい。

 初めの広告代理店の段階では、準備業務や運営業務のディレクターなどの日給が35万円、40日間で1400万円、他のスタッフもそれに準じ、途方もない高額になっているようである。ところが委託ごとに口銭を取られ、ピンハネされて安くなるので、実際に仕事をするパソナの五輪大会スタッフの募集要項では責任者でも時給1,650円、日当にして約12,000円とか、普通かそれ以下の値段になってしまうのだそうである。如何にピンハネがひどいものかがわかる。

 オリンピックという特別なイベントをだしに、法外な金が動いており、それを受け取るIOCをはじめとして、無数の業者がそれに群がり、金の奪い合いが起こっているようである。パソナなどの業者にとっては、右から左へと契約を動かすだけで、莫大な金が入ってくるのである。まさに濡れ手に泡の機会らしい。

 パソナはそれだけではない。政府との深い関係を利用して、コロナの予算にも食い込み、持続化給付金の給付などにも深くかかわっており、予算をパソナも関わる「サービスデザイン推進協議会」が769億円で受注し、そのまま749億円で電通に再委託しているのである。書類1枚で国民の血税を20億円もピンハネした事になる。その上、749億円で業務を受注した電通は、自分のところの子会社5社に丸投げし、そこからパソナトランスコスモスなどに再々委託。もちろん、その度ごとにピンハネが繰り返されているのである。

 自衛隊が行なっているワクチンの大規模摂取なども、自衛隊が全てをやるわけでなく、会場設営や事務的なことはやはり民間への丸投げされるので、こういう所にも食い込んで、下請けを抱えてピンハネで稼ぐことになっているようである。

 大勢の国民がコロナを恐れ、医療も満足に受けられないで死ぬ人もいるパンデミックの中で、ここぞとばかり、政府にしっかりしがみついて、ピンハネして口銭を稼いでいるのが「ピンハネ男爵」の所以らしい。案の定テレビでも、オリンピック反対の声に異議を唱え、開催を支持していたそうである。

  IOCにしても、広告代理店にしても、これではコロナが如何に猖獗しようが、如何に国民が死のうが、オリンピックは止められないであろうことがよくわかる。政府も、「ぶったくり男爵」や「ピンハネ男爵」のためには、何が何でも、オリンピックを止めるわけにはいかないのであろうか。