首相は国民に説明しろ!

 オリンピックまで、もう2ヶ月に迫っているのに、コロナの流行はなかなか収まりそうにもない。全国10の府県に出されている緊急事態宣言も、6月20日まで延長されることになった。

 そんな中で、政府は今なお、オリンピックは無観客になっても、やろうとして準備を進めているようである。誰が見ても、今季の大会は無理だと思われているのにである。世論調査でも70〜80%の人達が止めるか、延期すべきだと答えている。

 海外のメデイアなどでは、早くからいくつものメディアが中止を訴えていたが、日本でも、とうとう信濃毎日が嚆矢を切り、朝日新聞までが社説でオリンピック開催反対を表明するに至った。

 ただIOCのバッハ会長や、その他の幹部たちは、あくまでオリンピックをする積もりらしく、「犠牲を払っても」とか「菅首相が反対してでも」とまで言って強行しようとしている。商業主義化してしまったオリンピックには、放映権などの莫大な金銭的な問題が絡み、仮に中止した場合には、膨大な賠償金の発生などの問題が絡んでいるようである。

 日本が止めると言えば、すんなりと止められるものではない様で、契約によって莫大な賠償金を日本政府が払わなければならなくなうような問題も絡んでいるよである。もちろん開催するか否かの最終判断は主権国家の日本がするのは当然である。

 それにしても、どう見ても感染はおさまらず、ワクチン接種も進んでいない日本で、7月末にオリンピックをやるなど狂気の沙汰である。国民には外出を控え、三密を避け、人流を減らし、集会などの自粛を要請している時に、わざわざ大勢の人たちを世界中から集め、それこそ自粛とは逆の種々の競技をしようというのである。人命は金には変えられないのは当然である。

 こういう状況なのに、一番の問題は、首相が「国民の命と健康を守っていく」と何度も繰り返すだけで、これだけ国民が疑問の思い、苛立ってさえいるのに、国民に説明しないことである。

 世界中何処でも、こういう時には、リーダーたる者が先頭に立って、国民に訴えかけるべきものである。そうすれば、国民も納得しやすい。首相の説明如何によっては、それによって首相の株の上がることだってある。ドイツのメルケル首相やイギリスのジョンソン首相の例を見てもわかる。

 ところが、菅首相にはそれが出来ないのである。会見では原稿を読むだけで、黙って裏で手を回して物事を進めるといったを姿勢では、こういう非常の時には、良くても悪くても、うまくいかない。少なくとも国民の支持を勝ち取ることは出来ないであろう。

 いくらなんでも、オリンピックは中止して欲しいが、陰鬱な言葉のない首相を持ったこの国の国民こそ不幸だと思わざるをえない。