今年のオリンピックは止めよう!

 いつの間にかオリンピックまで、もう後50日しかない。普通なら、世界の祭典を盛り上げるため、聖火リレーを初め、色々なことが企てられ、盛り上がりを見せ始める頃であろう。

 しかし、折角のこのオリンピックを妨げる問題は、昨年来のコロナの流行である。もう一年半、一次から始まって四次まで流行を繰り返し、未だに緊急事態宣言が10の都道府県に出されている最中であり、街は何処も人流を抑え、三密を避け、マスク姿の人ばかりで、劇場やホールは閉ざされ、音楽会や芝居もなく、旅行にも行けず、Stay Homeで学校の運動会も中止といった有様。医療も逼迫し、入院も出来ずに死ぬ人も後を絶たない状態が続いている。諸外国から遅れてしまったワクチンの接種が慌てて行われているが、オリンピックまでに集団免疫に近づけるのは不可能である。

 こんな状態なので、あちこちからオリンピックの中止の声が上がり、オリンピック中止の署名は忽ち40万人を超えた。世論調査でも7〜8割の人が中止すべきだとしている。オリンピックの協賛者である新聞社からさえ反対の声が上がり、外国からの開催反対の声も聞かれるようになっている。

 それにもか拘らず、政府は今なお何とかオリンピックを実施しようと躍起になっているようである。加えて、本家本元のIOCのバッハ会長や幹部の人たちが声を揃えて「中止することはない」「たとえ菅首相が反対と言っても、アルマゲドンでも起こらない限り開催する」などと、まるで日本の主権を無視したかのような発言まで繰り返している。

 どうも昨年3月に、オリンピックを延期した時に、2年先に延期する意見が強かったところを、当時の安倍首相が自分の任期中にしたいために、強引に1年延期としたので、その時の約束で、延期は一回のみということになっているとかで、それがIOCが今年の強引な開催にこだわる理由とされているようである。

 それに、もしその約束を破れば、1兆5千億円だかの賠償金を払わせられる契約になっているのだとも言われており、それも政府がコロナ流行の爆発を抑えながらも、何とかしてオリンピックを成功させたいと願う根拠だとか。

 しかし、同じ所の推測では、オリンピック開催のためにコロナが猖獗を来たせば、その損害の方が遥かに大きく、5〜6兆円にも達すると出ているので、お金のためなら、1兆5千億円払って中止しても、その方が経済的に得だと言えるのかも知れない。

 これまでの政府のコロナ対策を見てみると、いつも後手後手で間に合わず、しかも経済優先で、折角落ち着きかけた1次の流行の山場で、早々にGO TO施作を始めたがために、流行を消滅させることに失敗した前歴がある。今周囲がこぞって反対する中で、なお強行するためにはそれだけの根拠が必要であろう。

 常識で考えても、誰かが言ったように、「学校の運動会が中止なのに、どうしてオリンピックが開けるのか」という言葉は十分噛み締める必要があるであろう。コロナの流行には人の命がかかっているのである。皆が言うように、命を犠牲にしてまで、オリンピックを開催する意味があるのだろうか。

 冷徹な予想もある中で、希望的観測のみで国の運命を賭けるのは、誰かの批判にもあるように、それこそ戦争末期のインパール作戦と同じではなかろうか。

 まだ今なら間に合う。大勢の国民の命もかかっていることである。冷静な分析と判断によって、小さな犠牲を払ってでも、多くの国民の命を守り、疫病の退散消滅を優先させるよう努力することが、将来の日本を再生させる道ではなかろうか。冷静に考えて頂きたいものである。