後期高齢者医療保険を使わなかったら・・・

 高齢者の増加とともに高齢者の医療費が高騰し、このままではいつまで医療費が維持できるかさえ問題になっているが、この後期高齢者医療保険を一切使わない人がいたらどうだろうか?

 そんな貴重な人がいたら、何か褒賞品でも貰えるとか、表彰されるとか何らかの特典があるのではないかと思う人もいるかも知れない。しかし、現実はそんなに甘いものではない。逆に、歳をとっているのに、後期高齢者医療保険を長く利用していないのは、何か怪しいのではないかとと疑われるのである。

 数年前だったか、親が既に死んでいるのに、年金の解約の手続きをせず、親がまだ生きていることにして、息子が年金をそのまま詐取していた事件が問題になって、新聞を賑わしたことがあった。

 親が死んで死亡届を出しても、役所の方では戸籍と年金が直接つながらないので、そういうことが起こる可能性があるようである。その時に、老いた親なら医療保険を使っているであろうから、そちらで調べたら、親の生死ぐらいすぐわかるのではなかろうかと、女房と話をしていたことがあった。

 私は87歳の時に心筋梗塞で入院し、90歳の時には階段で滑って救急病院に運ばれたこともあるが、血圧もコレステロールも正常で、肥満も糖尿もないので、老人検診や予防注射以外には医者へ行くこともないし、薬もビオフェルミンぐらいしか飲まないので、平素は全く医療保険のお世話になっていない。

 そんなことで、女房と「そのうちに役人が我が家へ生死を確かめにやってくるかも」と、冗談を言っていたら、それからさして日のたたないうちに、本当に総務省の人が突然、私の家へやって来たのには驚いた。

 丁度、外出から帰った直後だったからよかったものの、少し帰りが遅く、留守中の訪問だったら、女房にてっきり怪しい目が向けられるところだったのではなかろうか。

 そんなことがあったが、それもいつの間にかすっかり忘れてしまっていた。ところが、つい2〜3日前に、私の町を担当している民生委員の方から、ひょっこり電話があり、「何のことだろう? 災害などの緊急時の高齢者の避難が問題になっているので、そんなことなのかなあ」と思って、来訪を待っていたら、そうではなくて、再び、今も医療保険を使っていないので、健康かどうか、直接会って委細を調べるよう指示があって、来られたものであった。

 今度は民生委員を通じて調べることになったらしいが、やはり、後期高齢者医療保険を使わな人については、未だに同じような調査が続けられているようである。

 医療保険介護保険を全く使わないで行けることは有難いことではあるが、当然の権利を行使してない勿体なさも感じているのに、それらを使わないからと言って褒められたり、心配されたりするのではなく、怪しまれるのは一寸筋違いではないかと思わざるを得ない。