二人孤独死

 夕刊を見ていて、「二人孤独死」という記事を読んで、成る程と思った。こちらも90歳を超えておれば、孤独死については散々聞かされてきたし、自分のこととしても考えてもきた。私は孤独死を忌む者ではないが、「二人孤独死」などといったものには考えが及ばなかった。

 社会的にも孤独死が問題となり、地域の民生委員なども一人住まいの老人には注意するが、夫婦ともども健在な老人などに関しては、二人揃っていればあまり問題もなかろうと思われるし、人数から見ても、そこまでは面倒見切れないということもあり、あまり注意を払われないのが普通ではなかろうか。

 しかし、新聞の二人孤独死の記事を読んで成る程なと思った。93歳の認知症の母を介護していた68歳の一人娘が亡くなったが、残された母は助けを呼べなかった例や、67歳の夫婦で冬場に夫が急死し、足が不自由な妻が残され、そのまま低体温症で亡くなり、夫妻が遺体で見つかった例が挙げられていたが、なる程こういう例も当然ありうることだと思わざるを得なかった。

 私も93歳と87歳の二人で暮らしているが、娘や孫たちは全て皆外国に住んでいる。5人兄弟だったが、今では認知症で施設に入っている姉が一人いるだけで、国内では二人だけの孤独である。今はふたりとも元気だが、いつまでもこの状態が続くわけではない。

 どちらかが先に逝き、完全な孤独になることは覚悟してきたが、なるほど二人とも元気であっても、将来的には、どちらかが認知症になる可能性もあるし、足が悪くなって動き難くくなることだって十分考えられることである。

 「二人孤独死」とは考えなかったが、その可能性も十分ありうる。こちらが動けない状態で、女房に先立たれれば、どうにもならない。私はそれも覚悟して、それでも良いと思っているが、社会的には、この少子高齢化の時代には、独り住まいの孤独死だけを考えるだけでなく、孤独な老人全体を対象に、平素から社会との結びつきをどうするかを考えていかなければならないのだなと考えさせられた。