緊急時の情報弱者

 最近点状出血斑が急に両下肢に出現し、腕や体幹などのあちこちに小さな皮下出血の紫斑が見られるようになり、朝起きた時に唾を吐くと鉄錆色をしていたりすることがあり。これは血小板の低下が原因ではなかろうかと思い、検査をしてもらおうと近くの医院へ行った時のことである。

 待合室には既に5〜6人の先客がいたので椅子に座って待っていた。待合室にはテレビがあり、見ている人もいたが、音を落としているので、耳の悪い老人には何を言っているのか解らない。そこで持ってきた新書版の本を広げて読み始めたが、それも環境が薄暗くて読み難いので、半ば諦めて本を見たり、周りを見たり、ぼんやりしていた。

 するとやがて一人の座っていた人が立ち上がってテレビを見始めた。何の番組かなと思ううちに、すぐに他の人もテレビの近づいて見始めるではないか。何事だろうかと思ってよく見ると、それが先日東京で震度五だったかの地震を知らせる緊急放送であった。

 こちらは本を読むために老眼鏡をかけていたので、そのままではテレビの映像はボケてわからない。耳が遠いから音もはっきりとは聞こえない。かろうじて周りの人の動きで異変に気がついたのであった。眼鏡を外し、立ち上がってテレビの近くへ行ってやっと緊急放送が始まっていることを知り、その内容を理解したのであった。

 これまで気がついたことがなかったが、目や耳が悪いと、こういう緊急事態の時に、情報が一回り遅くしか伝わらないものだなあとつくづく感じた。

 若い人でも目や耳の悪い人、身体障害があったり、人とのつながりが悪い人などは、平時は何とか過ごせても、何か急な変化に見舞われたような時には、どうしても情報が遅れてしか伝わらず、難儀をすることになり易いのだなあということをつくづく感じさせられた次第であった。