元横綱白鵬を助けよう!

 新聞報道だけだから詳しいことはどこまで当たっているかわからないが、相撲界では時々不祥事が起こっている。大相撲の取り組みや勝敗についてでなく、それを運営する相撲協会に関するものである。どうも未だに尾をひく部屋制度やその上に立つ大元の相撲協会という時代遅れの閉鎖社会に問題があるように思えてならない。

 一頃もてはやされたハワイ勢が姿を消してからもう長くなるが、その後一人もハワイ勢がいなくなった経緯もわからないし、一時もてはやされた貴乃花も、横綱をやめてから相撲界の改革を唱えながら、相撲界から完全に締め出されてしまい、一族郎党全て姿を消してしまったという歴史があるところに、今度の白鵬の事件である。

 元白鵬宮城野親方が育てた弟子の元幕内の北青鵬の暴力問題で、管理責任を問われ、相撲協会の臨時理事会で「委員」から階級の最も低い「年寄」への2階級降格と3ヶ月の20%報酬減額の処分を受けたと報じられている。部屋の運営を担う師匠の立場も追放され、同一門の親方衆が協議したが、部屋を現場のまま存続させるのは難しいことになったようで、所属力士らは伊勢ヶ濱一門に転籍させれるようである。

 宮城野親方(元白鵬)が暴力を知りながら加害者に注意せず、協会への報告をおこたった点が問題とされたということらしいが、若い体を張った力士が集う所であるから、これまでも時々暴力事件は問題になって来ており、果たしてそれらの過去の事例と照らし合わせて妥当な処分であったのであろうか。

 というのも、近代の相撲の歴史を見て、現役時代の白鵬ほど日本の相撲界に貢献した力士はいなかったからであり、彼を中心としたモンゴル力士たちによって大相撲は生き続け発展し、今日の隆盛を迎えることが出来たのである。その不出世の元横綱を遇する仕方として果たして妥当であろうか。「恩を仇で返す」と日本人の倫理観まで疑われそうである。

 元貴乃花相撲協会の改革への意欲を、パワハラとしか取れない嫌がらせで潰し、相撲界から追い出した協会の歴史を見れば、今回の元白鵬に対する処分も何か陰湿ないじめのようなものが背景にあるのではないかとの疑いを払い得ない。

 処分された事件も相撲界ではこれまでもいくらもあったことで、とりわけ悪質とも言えない事件のようである。白鵬のモンゴル育ちのための文化の違いや、それによる判断のずれなども考慮すれば、相撲協会の判断はどう見ても正当化され難いのではなかろうか。

 どこまで当たっているかはわからないが、あまりにも厳しい協会の処分は、勘繰れば現役時代のあまりにも大きかった人気に対する反感や妬みなどが含まれたものではないかと疑われるし、モンゴル人に対する偏見なども関係しているのかも知れない。

 罪状と処分の酷さとこれまでの功績とを考え合わせる時、どうしても閉鎖された社会である相撲教会の側に大きな問題があるように疑われてならない。社会的には、この処分によってむしろ協会の閉鎖性、保守性が問われるのではなかろうか。第三者による冷静な判断を仰ぎ、相撲界を救ってくれた恩人に対する今回の処分が本当の妥当なものであったかどうか判断されんことを切に望む。

 大相撲のあり方についても問題になりながらずるずるとそのまま現在まで来てしまっているが、神事なのか、色町に結びついた遊興の世界なのか、それともスポーツなのか、何が一番中心なのかをいつかははっきりさせなければ、他のスポーツのような世界的なスポーツとはなり得ない。

 ここらで相撲協会の閉鎖的な権威主義を廃し、もっとオープンな組織に変えていかなければ大相撲の将来が危ぶまれる。そろそろ八角親方にも退場願って、もっとオープンで民主的なスポーツ世界として改組し、神事や遊興は付け足しと割り切ることが必要bなのではなかろうか。