森友学園問題は終わらない

 森友学園問題に絡んで安倍首相の「妻や私が関与していたら私は総理も議員も辞める」と言ったことは国民は今だにはっきり覚えている。それを言ったばかりに、財務省が忖度させられて、関与を裏付ける数々の公文書の改竄・隠蔽が行われたことも明らかになっている。

 ところがその時の財務省の責任者である佐川理財局長は国税局長官に栄転し、財務省の責任も結局誰一人問われていない。責任は近畿財務局に押し付けられ、そこでもまた佐川局長の指示により改竄に関与した職員は、後に全員転勤させて逃がし、抵抗したが加担させられた一人だけに尻拭いを押し付け、結果として、当人はその負担に耐えられず、鬱になり自殺するという痛ましい事件にまでなった。日本の官僚の典型的な身の処し方である。

 この事件が2017年のことである。それ以来、加計学園問題、桜を見る会問題、検察庁停年延長問題等々、安倍内閣の不正疑惑が次から次へと続き、その上、この2月からは新型コロナ感染症問題まで起こって、今や森友学園問題もいささか影が薄くなった感も否めないが、首相の嘘を官僚が真実を曲げて忖度し、そのために死人まで出すという異常自体は決してこのままで終わらせてはならない問題である。

 誰も罰せられなくとも、少なくとも真実の解明はしておかねばならない。そういう意味で、犠牲になった赤木氏の未亡人が夫の書き残した手記を公開するとともに、元理財局長の佐川氏と国を提訴したのは勇気ある行動であり、成り行きは注視しておくべきであろう。出来れば佐川元局長の再証人喚問をして、前回は告発に絡んで陳述出来なかった事実を国民のために是非明らかにして欲しいものである。

 これに対する安倍首相の反応は「大変痛ましい出来事で、本当に胸が痛む。改めてご冥福をお祈りしたい」というもので、その上で「財務省で麻生(太郎)大臣の下で事実を徹底的に明らかにしたが、改ざんは二度とあってはならず、今後もしっかりと適正に対応していく」と述べたそうである。

 果たして自分の虚偽の行為や発言がいかなる悲劇を招いているか分かっているのであろうか。独裁者でなければ、事実を明らかにして国民に詫びて欲しいものである。それまで森友事件は終らない。