単一民族国家は滅びる

 今でも日本は単一民族国家だと自慢する人たちがいる。皇紀2600年とかいう天皇を担いだ大和民族が暴走して惨めな敗戦を迎えたのに、まだ懲りない時代遅れの人たちがいるものである。

 もうアーリア民族だとか、大和民族だとか孤立した民族の優秀さを自慢する時代ではない。世界中の人たちが移動を繰り返し、混ざり合い、渾然一体となって来ているのが世界の現状である。最近のアメリカでのBlack Lives Matterの運動でも分かるように、まだまだ人種問題も残っているが、もう世界の潮流は1960年代の公民権時代とは変わってしまっている。人種問題だけではなく、LGBTなどの理解も進み、多様性が尊重される時代になってきているのである。

 日本も決して単一民族国家ではない。実際には弥生時代をはじめ古くから、南方からも、北方からも、西の大陸からも、いろいろな人たちがこの島国にやってきたし、それより多くの人たちが半島から渡って来て成り立った国である。アイヌ人が歴史的に本州にも広く住んでいた蝦夷人の子孫であり、生物学的な遺伝情報で北海道と九州南部や沖縄の人たちに類似性が強いこともわかっており、彼らが弥生時代に本州に広く住んでいた縄文人の末裔である可能性が強いとも言われている。

 古くからの長い歴史の間に大陸のあちこちや半島から、あるいは島伝いに多くの人たちが移住してきてこの島に住み着いたというのが最もありそうな姿であろう。そういう多民族の混血の人たちであったからこそ、この島国に素晴らしい文化が生まれたと考えた方が良いのではなかろうか。

 おかめとひょっとこで表される顔貌の特徴も、縄文系と弥生系の違いを象徴しているのかも知れないし、毛深さの違いも両者の違いに関係しているとも想像されている。もちろんそれだけではない。長い歴史の間に重層的に移民が次々にやってきて定住していったことは間違いない。桓武天皇の母親が半島人であったこともはっきりしているし、聖徳太子は西域からの血を引き赤毛だったとも言われている。

 そんな昔のことは別としても、戦前からいわゆる在日朝鮮人は多いし、最近ではブラジルの日本人二世を始め、諸外国からの移民も多くなっている。近隣の中国や韓国からの移民が多いのは当然として、ベトナム、タイ、フィリッピンインドネシア、マレーシアなど、東南アジアからきた人たちも多くなってきている。もちろん少数ではあるがアメリカやヨーロッパ、アフリカからの移民もいる。

 日本ではいまだ外国人があまり歓迎されないが、もはや世界の移民の潮流は止めようがなく、一時的には文化の違いから種々の問題を起こしても、世代が変わるにつれてそれも落ち着き多様性に満ちた国民が必然的に切磋琢磨することになり、優れた文化を創造していくことになるのが歴史的な必然のように思われる。

 単一民族純化すれば純化するほど、ガラパコス化して絶滅への道を歩まざるを得なくなるのではなかろうか。移民排斥などをやめ、優秀な留学生や技術実習生を出来るだけ優遇し、移民としてこの国に定着してもらえるように努めることがこれからの日本の発展にとって不可欠なことを知るべきである。

 今では技術実習生などを単純労働力としか見ていないが、この国での少子高齢化だけでなく、主として中国の少子高齢化、人口減少が起こる近未来見据えれば、国際的な優秀な移民の取り合いが起こるであろうことはもはや必然で、その勝敗がその国の将来の優劣にもつながりかねないことをも押さえておくべきであろう。

 優秀な留学生、日系外国人の優遇、国籍を生地主義にし、在日外国人の国籍取得を容易にするとともに、国や人々の移民排斥を止め、就労ビザの取得を容易にし、技術実習生の待遇を改め、家族帯同を薦め、日本語教育等も充実するなど、日本社会への同化を進め、将来の日本人の育成を考えて、優秀な移民の獲得に努めるべきであろう。