世界は変わる

 国連安全保障理事会は12月8日、米ニューヨークの国連本部で、イスラエル軍の侵攻が続くガザ地区での即時人道的停戦を求める決議案を採決した。15カ国の理事国のうち、日本を含む13カ国が賛同したが、イスラエルを支持する常任理事国の米国が拒否権を行使したため、採択されなかった。同じ常任理事国の英国は棄権した。

 以上はご承知の最近のニュース記事であるが、これだけを見ても、世界は確実に動き、変化していっていることを感じる。人々の記憶では、国連といえばアメリカが牛耳っており、マッカーサーが仁川上陸を果たし、朝鮮戦争の形勢を逆転させたのも、アメリカ軍ではなく、国連軍であったし、二十世紀中は何かの問題で理事会が決議しようとすると、いつもの様にソ連が拒否権を使って反対していた姿が思い出される。

 アメリカが拒否権を使って採決出来なかったということは記憶にない。ところが、今回のイスラエルとハマースの戦争では、13ヶ国の賛成に対し、アメリカが単独で反対することとなりい、拒否権を使わなければ、国連の決議を阻止することが出来ないことになったのである。

 10月7日にイスラエルイスラム組織ハマースの間の軍事衝突が始まって以来、安保理で決議案が否決されたのは5回目らしい。11月15日には人道支援を目的とした戦闘の「休止」を求める決議は賛成多数で採択出来たが、今回は再び合意を得ることが出来なかったわけである。世界は確実に動いており、今や国連でアメリカが拒否権を使って反対に回らざるを得なくなっていることに注目すべきであろう。

 11月の決議採択では米英とロシアが棄権したが、8日の決議案はアラブ首長国連邦が提案し、少なくとも97カ国が共同提案していた。民間人が国際法に基づいて保護されるべきだとして、人道的停戦に加え、人質の即時解放を求めていたものであった。

 世界の警察官として、朝鮮戦争ベトナム戦争、中東やアフリカへの介入、イラクアフガニスタン戦争と、数え切れないぐらい不当な武力行使を続けてきたアメリカも、今や国連を自由に動かすことが出来なくなりつつあることを示すものであろう。

 ウクライナ戦争と言い、イスラエルハマス戦争も、時代の矛盾の表れであり、こういった出来事をも起こしながら、世界は確実に動き、変化していっていることを感じないわけにはいかない。