トランプ大統領の弾劾裁判

 アメリカではいよいよトランプ大統領の弾劾裁判が始まるようである。

直接選挙で選ばれるアメリカの大統領の政治権力は強大なので、もし大統領自らが国を危うくするような不正に手を染めた時のために、建国当初に作られた合衆国憲法以来、議会に審判を委ねる「弾劾」の手続きが盛り込まれている。

 今回のトランプ大統領の場合には、「大統領選挙で優位に立つために外国政府に圧力をかけた」行為が憲法起草者が想定した不正行為に当たるということで、弾劾裁判ということになったようである。

 アメリカの民主主義はこうした弾劾裁判によって、権力のチェック・アンド・バランスで法治を守るようになっているのである。裁判の結果は、上院では共和党が優勢なので、弾劾はおそらく否決されるだろうという予想であるが、こういう記事を見ていると、日本でも、というより今の日本でこそ、こいう権力のチェック機構が必要なのではと思わざるを得ない。

 日本では、選挙によって選ばれた最大政党が総理大臣を決めることになっているので、一旦政権をとった政府は、首相自らが「立法府の長だ」と発言するぐらい、行政府と立法府の区別が曖昧になっており、立法府が行政府を抑えられるのは不信任決議ぐらいしかなく、国民が行政府をチェック出来るのは世論しかない。

 こういう状況下で、7年も続いた安倍内閣は、権力を官邸に集中させ、「議会制の中での独裁」とでも言える権力を築き上げており、森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会やその前夜祭の問題についても、都合の悪いことは隠して何も答えず、議会の調査権まで無視して、幼児のごとき虚偽の証言や、証言拒否で臨み、記録は廃棄してないことにしている。

 こういった日本でこそ、アメリカの弾劾裁判のような仕組みがあれば、政府や官僚に真実を語らせ、法に反する政府の悪行を暴き、現政権を追放し、政治の仕組みを変えられるのではないかと夢想しないではおれない。