日本の衰退の始まりか

 戦時中の徴用工の補償問題などがこじれて、日本が韓国に対して半導体材料の輸出規制を発動、更に8月2日には、安全保障上の輸出管理で優遇措置をとる「ホワイト国」から韓国を除外する処置をとり、いよいよ日韓対立が引き返し得ないところまで進んでしまった。

 日本政府はこれらの経済処置を徴用工問題などの政治的問題とは関係ないとしているが、誰が見ても日本政府の苦しい言い逃れで、政治問題を経済問題で報復しようとしているのは間違いない。

 今の政府の態度を見ていると、私がまだ子供の頃だった、いわゆる支那事変が始まった頃を思い出す。政府もメディアも、しきりに蒋介石はけしからん、暴支膺懲(ぼうしようちょう)だと息巻いていた。もちろん、今度は幾ら何でも戦争にまではならないであろうが、相手が弱いと見ると、あくまでも強気で、何処か似ているのである。

 しかし、経済問題はこちらにも跳ね返ってくる問題で、その結果が将来どうなっていくのか慎重に判断しないと、相手を困らせる積もりが、長い目で見ると、こちらが大きなダメージを受ける可能性が大きくなることも考慮しておかなければならないものである。

 経済的な損失だけでなく、国際的な信用も著しく失墜することとなるし、隣国の人々からの恨みも買うことになる。これまで積み上げてきた外交的な努力も水泡に帰してしまうことにもなりかねない。

 韓国は最も近い、交流も長い隣国である。かっては一時的に日本が植民地としていたと言っても、古い歴史を見れば、日本の発展は韓国に負うところが随分多かったことも知るべきである。

 一方、将来をみれば、日本の人口は今後、確実に減って行き、これを正すことは容易には出来ないことがはっきりしている。日本が再び経済大国になることは最早不可能である。近隣国と交流を盛んにして、いわゆるウインウインの関係でやっていかないと、経済的にもうまく行かないであろう。アメリカ一辺倒の外交の限界も次第にはっきりしてきている。近隣諸国を無視して、将来の日本の発展は考えられない。

 アジアにおける大国としての日本の時代をもはや終わったことを認識すべきである。ここらで、過去の歴史にも、もう一度しっかりと目を向け、周辺諸国の意見も取り入れて、周辺諸国と共存していくことを考えていかないと、この国の将来はないと思わざるを得ない。

 出来るだけ早く韓国とのトラブルを終結させ、良好な関係を復活させることは韓国にとってよりも、日本の将来にとって必要不可欠なことと思われる。