映画「Paris Taxi」

 女房が友達に勧められた良い映画だと言うので見に行った。パリ郊外の屋敷に一人住まいの九十二歳の老婆が、いよいよ終活で施設に入るために、タクシーを呼ぶところから始まる。呼ばれたタクシーの運転手は毎日12時間以上も働くが、貧しく、おまけに交通違反などで免許停止ギリギリの男性である。

 女性の行き先は同じパリ郊外でも、全く正反対の方角の郊外で、老婆の希望で、パリの中心部を経由してあちこち寄り道をして行くことになる。その間に女性の一生を中心にした話が展開して行くので、一種のロードムビーのようなことにもなる。

 初めは女性が声をかけても、運転手は自分の生活のことでいっぱいで、満足に答えないぐらい打ち解けない関係であったが、パリの街をあちこち回るうちに、次第に女性の話に乗せられて、運転手もすっかり打ち解けて、途中で一緒に観光したり、喫茶店へ寄ったりして行くようになり、その間のに女性が自分の若い時からの過酷だった人生を語っていくことになるという筋書きである。

 戦争が終わったのが女性の十五歳の時で、駐留米兵と恋仲になるが、米兵はやがて帰国する。子供を宿した女性は懸命にに連絡を取ろうとするが叶わず、やっと連絡がついた時には、彼はすでに結婚して子供もあると言うことでそれきりなった。

 そのうちに他の男性と恋仲になり、子持ちで結婚するが、夫の暴力がひどく、子供にも私生児と言ったりしてきつく当たるので、遂にある時、お酒に薬を入れて意識を失わせ、夫の淫部を焼いてしまう。そのため裁判になり、時代背景から女性擁護の声も上がったが、未だ陪審員も全て男性という時代でもあり、二十五年の懲役刑に処されてしまう。

 その後、模範囚だったので、刑期半ばで出所出来たが、折角一緒に暮らせると思った息子は、留守中の家庭環境から逃れたくて、報道員となり、ベトナム戦争に行き死んでしまう。

 そんな話を続けながら、しまいには施設への到着が遅れることを知らせて、二人でレストランで一緒に食事までして、夜遅くにやっと施設に到着することになる。そこで女性がタクシー代を払おうとするが、二人が意気投合してしまっていたので、タクシー運転手は、また見舞いに来るからその時にと言うことで別かれる。

 ところが、タクシー運転手が家に帰りその話をし、数日後に奥さんと一緒に面会に行くと、その前日にもう死んでしまった後だったと言う結末になっていた。

 女性と運転手が二人とも名優らしく演技も素晴らしいし、あちこちのパリの景色もよく、パリの観光にもなるし、音楽も良い。それに乗って女の一生が語られるので、久し振りで昔のメロドラマに似た雰囲気となり、成程、女性に評判が良いわけだなと思わせた。訪れた映画館も補助席まで出した満員の盛況であった。