映画「シスター・夏のわかれ道」

 脚本ヨウ・シャオイン「游暁○」、監督イン・ルオシン「殷若日斤」と、二人とも女性で、中国の一人っ子政策による社会や家族の歪みに翻弄される若い女性を扱った映画。中国で評判になった映画らしいが、なかなかの秀作である。

 一人っ子政策の下で、伝統的な家族制度を守るためには、男の後継者を得ることが大事なので、男の子が重宝され、女の子は除け者にされやすい。そんな中で生まれた女主人公アン・ランは粗末に扱われ、第二子を儲ける口実に足が悪いことにされるといったことなどもあり、早く実家を出て自立して暮らしていた。

 大学を出て、病院でナースとして働いているが、それも彼女が医学部を受験しようとしたのに、父親に勝手に看護学部に変えられた結果であった。それでも、彼女は医師になる為の道を目指し、一所懸命勉強をしていた。

 そんな時に両親が交通事故で突然共に死んでしまう。すると、見知らぬ弟が現れて、突然アンランは姉になってしまった。自分が家を出てから生まれ、両親に大事に育てられていた弟、アン・ズーハンであった。親戚の者たちは姉だから、当然弟を育てるべきだという。しかし、自分のこれから先の人生を考えると、弟の面倒など見ている暇はない。

 困って、弟を養子に出すことにし、養子先が見つかるまで実家で一緒に暮らすことになる。親の死を受け入れられない弟の我儘に振り回されたりしながらも、アン・ランを頼るしかない弟と一緒に暮らすしかなかった。

 ところが、そのうちに次第に愛情が出てきて、お互いに頼り合うようになっていく。養子先が決まるのだが、今度は離れがたく、今後いっさい会わないという誓約書へのサインを書くことが出来ず、一緒に飛び出して行くというストーリーで、最後はオープン・エンディングになっている。

 アン・ラン(チャン・ツィフォン「張子楓」)とアンズーハン(ダレン・キム「金遥源」)の姉弟の演技が素晴らしかったし、それだけでなく、伯母や叔父、従姉、恋人や、それに事故を起こした運転手なども絡み、なかなか巧妙に組み合わされた映画となっており、思わず涙ぐむような場面もあった。

 中国社会の文化や、中国女性の強さなども感じられ、興味深く鑑賞できた映画であった。