モッコウバラ

 

 2−3年前の春だった。近くを散歩していた時に、とある家の玄関先に、地上から出入り口の横の壁面を広く覆って、二階のベランダまで届く、見事なまでに黄色い花の幕を見て驚いたのが始まりであった。

 それまでそれがモッコウバラということも知らなかったが、それから注意して見ていると、他の道筋の垣根にも、モッコウバラを使っている所があったし、池田市の「緑のセンター」といった小さな植物園のような所の庭のテラスのような所にも咲いていた。

 小さな黄色い花がぎっしり詰まって咲き、広い範囲に伸びて黄色い花の膜を作っている。香りも良いようだし、すっかり気に入って、我が家の庭にも植えたら良いなあと思い、早速手に入れようと、夏の終わり頃に園芸屋さんに行った時に聞いてみると、モッコウバラの苗は一月ごろに売り出されると言われ、その時は手に入らなかった。

 手に入らないと、余計に欲しくなるもので、忘れないようにと覚えておいて、次の年の明けるのを待って、早速、苗木を2本買って持ち帰り、鉢に植えた。

 春になると、新芽が出、蔓も伸びたが、まだまだ苗木の範疇を出ず、2〜3花がついたぐらいで、その年は来年を期待するだけのことで終わってしまった。

 しかし、今年になると違って来た。苗木も一年の間に大分成長し、庭先のべランダの扉の両端に一鉢づつ置いてやると、どんどん蔓が伸びて、ベランダの柱の天井まで伸び、春になると、蕾が次々に膨らみ、やがて一斉に黄色い花が咲き始めた。小さな花であるが密集して咲くので、あたり一面が黄色に覆われたような感じがして、毎日覗いて見るのが楽しい。

 あとはこれをどう伸ばしてやったら良いものかを考えることになる。ベランダの天井に這わせて、左右の蔓を絡ませるようにすれば、黄色いアーチができるのではないか。ベランダの天井いっぱいに広がってくると。ベランダが黄色い花で覆われることになるかもなどと夢想したりすることになる。来年、再来年の姿を想像したりすると楽しくなる。

 つい2〜3年前までは考えもしなかった風景が出現したことに驚かされるとともに、当方がいつまで生きているか分からないが、来年、再来年と、新たな楽しみが出来たことを喜び、毎日飽きずに成長を見守っている次第である。