秋の好日

 今日10月24日はとても快適な秋らしい一日だった。

 今年は9月のお彼岸を過ぎても、まだ猛暑が続いていたが、さすがの10月も半ばを過ぎると気温も下がり、朝夕など寒いぐらいの日も出てきて、もうセーターを着る季節になってしまった。もう芒の穂が風にそよぎ、コスモスの花も揺らいでいる。しばらく少なくなっていた秋の背高泡立草も元気を盛り返したのか、この秋は黄色い花があちこちで増えてきた感じである。

 もう暑くもないし、まだ寒くもない。その上天気が良い。しかも今日は土曜日。となると、

誰しもちょっと何処かへ出かけてみたい気になるであろう。しかし、まだコロナが怖いので、人の多い街へは行きたくない。必然的に近場の郊外ということになる。家族などで車で出かけるのが一番安全だということにもなるのであろう。今日は道路はどこも車の渋滞である。それも大阪の市内に向かう車より反対方向が俄然多い。

 我々もこんな日に外へ出かけない手はない。さて何処へ行くか。電車やバスに乗って行く所は込み合うだろうからと考えて、近くの五月山に行くことにした。昼前に近くのスーパーで弁当を仕入れて女房と一緒に出かけた。最近は毎日下から眺めるだけで、もう長く登っていない。

 昨年の秋から脊椎管狭窄症になり、コロナの猖獗と重なり、今年の初めから夏の初め頃までは、シルバーカーを押さなければ歩けず、年を考えれば、もうこのままで行くよりないかと思って諦めていたが、幸いなことに、また歩けるようになって、なるべく毎日歩くようにして、少しづつ距離も伸ばしてきた。しかしまだ山道は危ないし、疲れるので敬遠してきたのである。

 元気な頃は気軽に始終登り、我が家の庭のようなものだったので、いつかはまた登ってみたいと思っていた。ただ、先日は麓まで登っただけで、もうしんどくなり、公園で休んで帰ったこともあったので、今日はゆっくり上がってみようと考えた。

 今日は五月山も家族連れなどで結構賑わっていた。まだ紅葉には早いが、それでも部分的には紅葉している木もあり、秋の風情が感じられた。元気な子供づれに道を譲って、ゆっくりと山道を登り、展望台まで上がって一休み。ベンチはすでに家族づれに占領されていたが、しばらく立ち止まって景色を眺めたりした。何度見ても山から見下ろす景色は気持ちが良い。マスクを外して清々しい空気を一杯吸い込んで見る。

 そこからハイキングコースにもなっている山道を通り、階段を上がって、ドライブウエイを横切って公園に出て、そこから今度は北側の遠景を眺める。この方向は昔は山ばかりだったのに、今は能勢の住宅がぎっしり詰まって、遥か遠くまで白い家屋が続いている。いつか行った遠くのダムや、山の上の住宅地につながる長い陸橋なども見える。ここも休憩小屋は家族連れに占領されていた。

 仕方がないので、そこからすぐ上の愛宕神社へ登り、境内で一服する。女房が拝殿にお参りし、元気にここまでまた来れたからというので、千円札をお賽銭箱に入れていた。私たちの後からタクシーで神社へ来る人があったので、どういう人かなのかと思ったが、お参りして社務所の建物に入っていったので、どうも神社の人のようであった。

 我々は境内の端にあったベンチに座って、弁当を食べて休憩した、この神社は古い神社で、毎年、夏にはガンガラ火祭りと言って、大きな松明を大勢で担いで山を降り、池田の街を練り歩くお祭りがあり、五月山には二ヶ所に大文字の篝火が焚かれるのである。

 この神社の歴史は古く、大昔からここの住人であった佐伯部氏の祖神を、愛宕神社の火の神様などとともに祭り、火伏せ、すなわち防火の神様として受け継いできているそうで、五月山も昔は佐伯山と言われていたのだそうである。

 愛宕神社からさらに日の丸展望台の方まで行こうかとも考えたが、下山と距離を考え、無理はすまいと思って、少しだけ回り道をして帰ることにした。下りは登りよりも怖い。しかも下り道には木の根っこや、枯葉、小石などの多い自然の小道である。以前はどうということもなく、大股で降ったものだが、今やそうはいかない。下を見て注意しながら、慎重にゆっくり降りていった。途中で登ってくる人や、後から降りてくる人が、老人と見て道を譲ってくれるのだが、時間がかかるので、ことらが立ち止まって、先に行ってもらうようにして、後からゆっくり降りるようにした。

 それでも思ったより快適に下の大広寺まで降りて、境内の椅子に腰を下ろして一休み。ここまで来ればもう安心やれやれである。何とか無事に登って来れた。ここも見晴らしが良く、遥か彼方の大阪の高層ビルの影が良く見えるので、あそこが梅田界隈、あそこが弁天町、あっちが南港などと確かめたりして楽しんだ。

 後はいつも歩く範囲なので、安心してゆっくり歩いて帰った。昔なら何でもない裏山だった五月山も、今や簡単に行くわけにもいかない。しかし、何とかでも、行けるようになったことはありがたい。シルバーカーを押してではちょっと無理である。

 街へ降りても、今日はどこも人出で賑わっていたし、車の渋滞もいつまでも続いていた。こうして秋の一日を十分楽しむことが出来た。万、万歳である。