ケーキ”サヴァラン”

 ニューヨークに住んでいる娘が帰って来るので、どこかで家族一緒に食事でもということになり、千里中央の阪急ホテルに決めた。娘たちが育ったのが千里のニュータウンであり、近くなので、その頃、時々行ったホテルで、しかも、このホテルはもうすぐ閉店することもあり、懐かしい所ということで選んだ。

 ところがその相談の過程で、下の娘がその頃、そこで食べたサヴァランというケーキが美味しかったことを今でも覚えていて、今でもあるかなという話になった。

 私は戦前、戦後の貧しい時代に育ったせいもあり、更には、侍の家系の名残を受け継いでか、「武士は喰わねど高楊枝」という精神が残っているのであろうか、食べ物にはあまり強い関心を持たない方だったので、いつどんなデザートを食べたかなど、そんな古いことを覚えているはずもなかった。女房ももうすっかり忘れていた。

 娘はおそらく、子供の時に食べたおいしさが強烈だったのか、今でもその味をを覚えていると言うが、1〜2年前にヨーロッパに行っているので、その時に、フランスででもサヴァランを食べて昔の味を思い出したのではなかろうか。こちらは何も知らないので、どんなものか想像もつかない。

 Googleで調べてみると、元々は乾燥してしまったパンをラム酒につけて、クリームを添えて食べたら美味しかったのが始まりだとかで、BABAとか呼ばれていたとか書いてあった。それが発展して、ラム酒をどっぷりかけたパンに、クリーをたっぷりかけ、その上に果物を載せたものを SAVARINというようになったとか書いてあった。

 大阪でも、ケーキ屋さんで今も売っている所もあるらしく、梅田の阪急にあるコロンバンにもあると書いてあった。女房も関心があったらしく、二人で大阪市内へ出かけた帰り道に、わざわざ阪急の八階まで上がって、コロンバンの店に寄った。

 店頭のケースに、まるでおあつらえ向きのように、丁度三つだけ、サヴァランが残っているではないか。早速、三つとも買って帰り、娘の所へ寄って、三人で3時のおやつにした。成程ケーキの受け皿にまで、ラム酒がたっぷり溢れ、湿ったパンと、その上に伸びた豊かなクリームから顔を出す果物の調和は、見た目も良く、味も十分楽しむことが出来た。

 ひょんなところから、思わぬケーキの名前を覚え、午後のひと時を楽しむことが出来た次第である。