節電呼びかけて年末大イルミネーション

 この写真の通り、政府は電力不足なので、この冬は重ね着などをして、暖房の温度も低めに設定し、節電するように呼びかけている。

 ところが、それにもかかわらず、年末の各地のイルミネーションは、例年にもまして盛んな様である。なんだかおかしいなと思うのは私だけであろうか。常識的に言えば、電力が本当に不足するのなら、出来るだけ生活に不可欠なものに優先して使い、そうでないものから削っていくのが順序ではなかろうか。

 年末のイルミネーションは多くの人の楽しみであり、なければ寂しいが、生活の我慢をしてまで点さねばならないものではないであろう。にも拘らず、イルミネーションなどが例年の如く続けられているのは、大臣の発言にも関わらず、少なくとも現時点での電力不足はないものとみてよいであろう。それならそれで、年末の各地のイルミネーションは大いに楽しむべきであろう。

 ただ電力不足が全く心配ないものかと言えば必ずしも、そうとも言えない様である。

 福島の原発事故以来、原発全廃の圧倒的な世論に押されて、政府は原発廃止に傾いたが、核開発能力が将来の原子力利用、ひいては原爆などの軍事的利用なども考慮して、それを何とか維持したいために、原発全廃には踏み切れず、それを曖昧なままにして議論を凍結してこれまで来てしまい、国民の原発再開反対の声を無視して、議論もないままに、将来の電力供給能力には20%程度の原発利用を決めるなどして来ているのである。

 そういう曖昧な姿勢で議論を曖昧にしたまま放置してきたために、折角のチャンスであった太陽光発電風力発電などの代替発電力の開発普及は諸外国に対しても大きく遅れを取り、また、その間に、電力の75%を賄っている従来の火力発電施設などの老朽化が進み、その上、さらに近年の燃料ガスの世界的な不足、価格上昇などが重なり、電力供給基盤が緩んできてしまっているのである。

 現在、各電力会社が一斉に値上げして、不況の我が国の庶民の懐を直撃しているが、それが現在のこの国の電力事情らしい。政府はこの機会を利用して電力不足に対応するためには原発再開しかないとして、原発の再開を進めたいのであろう。電力不足は供給余力が減ったのは事実であろうが、政府はそれより電力不足を解消するには原発再開しかないと言いたいた様である。

 原発の安全性を考えて、初めはその運転期間を40年と定めていたものを、60年に伸ばし、更には60年を超えても運転可能としようとしている。普通の火力発電種所でも、40〜50年も経てば老朽化と言われているのに、より安全性を問題にしなければならない原発の運用期間をただ現時点で問題がないからと言って、60年やそれ以上迄さえ認めるのは甚だ心配である。

 福島原発事故は、もう10年以上も経っても、まだまだ処理しえないままでいる。若狭湾の海岸に並んだ幾つもの原発は戦争ともなれば絶好の標的となり、原爆がなくとも、これらの原発の破壊だけで、日本は立ち行かなくなるのではなかろうか。将来の電力事情については安易に原発に頼るのでなく、もっと真剣に国民的な議論を進めるべきではなかろうか。