世界は確実に動いている

 突然のロシアの侵略によるウクライナ戦争が起こり、世界の非難がロシアに向けられている。世界大戦の苦い経験から、話し合いで国際問題を解決しようとして出来た国際連合も、常任理事国による侵略戦争で、その存在意義さえ問われることにもなってしまっている。

 しかし、ここに至るには冷戦終結以来の、勝者のアメリカが一貫してロシアをいじめ抜いて来た歴史があり、それがいよいよロシアの隣国であり、歴史的に同根の民族であるウクライナNATO加盟にまで及んで来たことが、ロシアの軍事行動の直接の動機であると言われている。

 それに対して、アメリカは軍隊は送らず、軍事援助とこれまでにない広範な経済制裁を世界に呼びかけて実施して来ている。開戦当時は、侵略戦争反対には国連の百何ヶ国以上が賛成し、国際通貨制度のSWIFTからのロシアの締め出しまでを含む、徹底した経済制裁で、ロシアは石油やガスの輸出まで出来なくなり、アメリカは軍事援助や高いアメリカ石油の代替の輸出で大儲けし、ロシアはどうなるかなと心配させられた。

 ところが、早期から一時急落したルーブルはすぐに持ち直して、以前の値を維持しているし、経済制裁も徹底せず、それまで石油やガスの資源をロシアに依存してきたヨーロッパ諸国はロシアからの輸入を早急に禁止することも出来ず、ルーブルによる取引が続けられているし、インドはロシアから安く大量の石油を買い入れ、それを転売するようなこともあり、もう少し様子を見ていかなければ分からないが、今のところ、ロシア経済は返って発展しているとも言われている。

 それに対して西側諸国では石油のみならず、食料品その他の日常品等の物価上昇でインフレ恐怖が起こり、その対策に振り回されている。その上、世界中に同調を呼びかけたロシアに対する経済制裁も、ヨーロッパやアングロサクソンの国々、それに日本、韓国以外は、予想に反して同調する国が少なく、中国は別としても、インドも拒否し、アフリカ諸国、アジア諸国の同調も得られず、南米諸国までがこぞって制裁に顔を背けた結果となった。

 さらに改めて同調を求めて行われたアメリカの呼びかけでも、シンガポールの会議ではマレーシアやインドネシアなどの反対で、東南アジア諸国アメリカの意にかなわなかったし、地元の米州会議でも、独裁国家としてキューバ、ニカラガ、ベネズエラを外したのが仇となって、メキシコも欠席、その他の南米諸国でも同調を得られななった。

 ソ連が崩壊し、世界の警察官と言われるまでになった、一時のアメリカであれば、世界中の国々を従わせることが出来たであろうに、中南米の国々を制し、中近東や北アフリカイラクアフガニスタンで戦争を繰り返し、遂にはアフガニスタンからの撤退を余儀なくされたアメリカには最早世界に君臨するかっての威力は失われてしまっているのであろうか。

 世界が確実に動いていることを感じる。ウクライナ情勢にしても、プーチンは強気に出て、あくまで目的を達成しようとし、アメリカや西欧諸国は依然として、ゼレンスキーに戦争を続けさせようとしているが、アメリカの識者や、ヨーロッパは密かに停戦交渉を求めているようである。

 こうした世界情勢の中で、今後のアメリカの最大の目標はロシアよりも、アジアの中国の台頭をいかに抑えるかということであろう。今や中国は日本を遥かに追い抜き、アジアの国々の評判も、既に日本より上になっている。

 アメリカは既にあらゆる手立てを使って中国の発展を抑えようと工作しているし、今後はますますひどくなるであろう。その中で、アメリカにいつまでもくっついていると、いつの日にかは、日本はアジアで孤立し、取り返しのつかないことになる恐れが強いことも知っておくべきであろう。