金木犀

 9月のいつ頃だったであろうか。テレビの気象予報の時間に、予報士が金木犀が咲いたと言っていた。もうそういう季節なのだな。我が家の庭の金木犀もそろそろ咲くのだろうなと思って聞き流していた。

 しかし、いつまでたっても庭の木星は一向に咲きそうにない。昔だったら、あの甘い芳しいような匂いで金木犀の開花を知らせてくれたものだったが、歳をとって嗅覚が鈍くなると、匂いは全く当てにならなくなってしまった。

 それでも、いくら目で確かめても、いくら待っても一向に咲かない。そのうちに、2〜3週間たって、テレビの同じ予報士がまた金木犀に触れて、二度咲きの花が見られたと話していた。それでも、我が家のは一向に咲きそうにない。

 何かおかしいのではないかと思ったが、そういえば、駅に向かう途中の家の道路に面した庭にも金木犀が2本あり、いつも塀沿いの道路を落花で黄色く染めていたものだが、そこも今年は全く咲く気配がない。その近くの他の家の金木犀も緑のままである。

 どうも我が家の金木犀の具合が悪いのではなく、ここらの気象条件よるものと考えた方が良さそうである。それにしてもどうしたものか。もう10月も過ぎてしまう。今年はひょっとして、もう咲かないのではなのかとさえ思われたが、11月になってやっと一斉に咲き出した。

 我が家の3本の金木犀も一斉に黄色い花をつけ出したし、近くの家の2本も緑の中に黄色のコントラストを輝かせ始めた。これで一安心。金木犀は昔から二度咲きなどがよく言われてきたように、案外気まぐれなところがあるらしい。

 金木犀には謙虚、謙遜、陶酔、真実、気高い人など色々な花言葉が添えられているが、これらにもう一つ「気まぐれ」というのも付け加えて方が良いかも知れない。

追記:これを書いた後、午後に家の近くを散歩したら、どこも金木犀の花盛りでした。川向こうの養護学校の校庭に並んだ8本の金木犀も全て満開でしたし、周辺の家のそれも皆黄色い花をいっぱい咲かせていました。気候の関係で、今年は開花が遅れただけで健在なことを確認して安心しました。