失神発作

 その日は、午後からアメリカへ行っている娘のマンションの片付けに行って、風呂に入り、後一杯ひっかけて帰った。夕食は普通にして、いつものように七時半頃にはベッドに入った。急に暑くなったためか、寝苦しい感じがして、八時半頃にトイレに行った。

 立って排尿しかかった時に、眩暈感がしたところまでおぼえている。その後、気がついた時には女房がドスンという音がしたので、びっくりして見に来て、倒れている私を起こして支え、便器の前に座らせたところであったようだ。それから二度ばかり嘔吐し、落ち着いたところでベッドに帰って横になった。

 気分の悪さが残っている中で、色々なことが頭に浮かんで来た。まだ、少し息苦しいような気がする。胸が重苦しいような感じがする。7年前の心筋梗塞のことが思い出される。あの時も胸部絞扼感のような感じは全くなかったが、とにかく体全体がしんどく、何か胸がモヤモヤしてしんどいといった感じであった。それがいつまでも取れないので、自分でこれは心筋梗塞ではないかと近くの医師の所へ行ったら、やはり心筋梗塞で、忽ち救急車に乗せられ入院させられたのであった。

 2〜3時間眠れぬままに、どうしたものかとあれこれ思案していたが、これはやっぱり心電図だけでも撮ってもらっといた方が良いのではないかと、救急車を呼んだ。コロナで忙しいので時間がかかるのではないかと危惧したが、こちらが入院の準備をしている間に、たちまち救急車が来てくれた。

 最近の救急隊員はよく訓練がされているものである。玄関先まで来た3人の隊員が、それこそ手際良く、簡単な病歴聴取から脈拍数、呼吸数を始め、血圧、酸素飽和度を測り、心電図までその場で撮ってくれた。幸いどれも心配する値ではなく、ここで心電図まで撮ってもらえるとは思っていなかったが、見せてもらったところ、心電図も以前の傷跡だけで、大きな変化はないようである。

 心電図まで見せて貰ったので一安心。これなら入院しなくても行けそうだ。又の入院は出来ればお断りしたかったこともあり、救急隊員とも相談して、お礼を言って、帰ってもらうことにした。 どうも、テレビでも急な暑さで体が慣れていないので、水分を十分取って下さいと注意しているところだし、アルコールの入っているところへ、気候の不順に体が適応出来ずに、発作が起こったものであろう。

 以前にも、心筋梗塞で退院したすぐ後に、親戚の者が退院祝いに来てくれていた時に、副交感神経血管反射で同じような失神発作を起こし、再入院させられたのだった。今回もそれと同じような発作だったようである。あの時は再入院したばかりに、何から何まで調べられて、無罪放免となったものであった。

 一日二日、様子を見てみようと、どこにも行かず家で静かにしていることにした。「二度あることは三度ある」とか、「三度目の正直」という言葉もある。アルコールは控え、気候不順の時は、出来るだけそっとして様子を見ることも必要なようである。