新型コロナ感染症に便乗した憲法改正の動きに注意しよう

 新型コロナ感染症(Covid19)が日本でもどんどん拡がって緊急事態宣言まで出されることになってしまったが、日本政府の対応は初めからあまりにも遅すぎるし、今なお徹底していない。

 初めから医療崩壊が起こるとしてPCR検査も出来るだけ絞って多くさせないようにしてきたのはオリンピック開催が絡んでいたのであろうが、感染者が広がって来て緊急事態宣言を出してからも、国民の自粛に対する補償も殆どしない。経済的な影響を考慮してか、社会に対する休業の要請も諸外国に比べて徹底しないなど、政府の対応には疑点が残る。

 マスクを二枚配ったり、自宅に留まれと、首相の優雅な自宅での姿をSNSに出して、8割の人が在宅を守れば、ウイルスの増加が抑えられるだろうと言い、取り締まりの警察官の動員は強化するも、新型コロナ撲滅に対しては今ひとつ徹底してする様子がない。

 『「8割減」で「頑張ろう!」ってなってますけど、これ壮大なインパールですよ。そりゃきちんと戦略も装備もあって進むならいいですけど、「8割減」という目標だけあって、それを実現する具体策もロジスティクスもない。失敗や遅延に対する対策もない。こんなの戦略とはいえません。高確率で沈みます』という人もいるぐらいである。

 当然のことながら、休業補償をしろという声が大きくなるとともに、国や自治体の首長だけでなく、国民からも『外出者を取り締まれ』という声も大きくなる。「警察官も大変でしょうけど頑張ってください。憲法改正してもっと強制力のある手段が使えればいいのですが。」

 『今一番大事なのは「公共の福祉」。「公共の福祉」のためには、「私権」を制限できるというのが日本国憲法の考え方。「公共の福祉」を毀損する左翼は黙っていろ。』というような声まで聞こえてくる。

 どうも、これでは新型コロナ感染症対策がうまく行くとは思えない。想像を逞しくすれば、政府はこの緊急事態宣言に伴う一連の処置で、真剣ににコロナウイルスの拡散防止に成功することを望んでいるのだろうかという疑問さえ湧いて来る。

 国内でコロナ感染者が出始めた今年の1月末に、自民党伊吹文明衆院議長が「感染拡大は憲法改正の大きな実験台だ。改憲議論のきっかけにすべきだ」と言ったのを思い出す。この時は「悪乗りが過ぎる」とされて一旦議論は消えたそうだが、4月になってから、このコロナ感染症の問題が大きくなるのに乗じて、自民党憲法改正推進本部(細田博之本部長)は10日、党本部で会合を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた緊急事態対応の在り方を協議している。

 自民党衆議院憲法審査会で議論を進めたい考えだが、野党の反発でめどは立っていないようである。にも関わらず、感染拡大防止のため大半の党会合を取り止めている中で、開催を強行し、緊急事態を巡り、自民党としての大規模災害を想定した条項を憲法に新設する案をまとめており、安倍首相(党総裁)も7日、緊急事態宣言の発令に先立って、国会での議論進展の期待を示したようである。

 最近の産経新聞世論調査の結果では、緊急事態宣言は「遅すぎる」が8割超で、内閣支持率は39%で不支持が支持上回る が、 政府の措置に強制力を担保するため憲法改正して「緊急事態条項」を新設することに65・8%が賛成 しているそうである。

 新型コロナウイルスの感染拡大で政府に強い対策を求める世論を背景に、自民党は何とかこれを国会の改憲論議につなげようと模索を続けている。大規模災害時と似ているとして、「緊急事態条項」創設を巡る議論を求めたり、国会議員に感染者集団が出る事態に備えるための「国会の定足数」などをテーマにし、「コロナ禍」を逆手に、別表なような点から改憲論議の糸口をつかもうと色々な策略が考えられているようである。

 こうした現状を見れば、現在のコロナウイルスの蔓延による緊急事態の中にあって、疾病に対する恐怖、医療や休業とその補償、日常生活の圧迫や困窮による不安を抱えながらも、この混乱を利用した改憲の動きをしっかりとチェックしなければならないことがわかる。政府や自民党はこのコロナ感染による混乱のどさくさに紛れて、国民の不安に乗じ、緊急事態条項を作り憲法改正に繋ぎ、あわよくば9条も改正しようと企んでいる恐れが強い。
 まさに火事場泥棒である。人々の不安に便乗した憲法改正へも道は如何なることがあっても阻止しなければならない。

 

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