親日家のスリランカ女性の死

 新聞によれば、今年の3月6日、2017年にスリランカから留学生として来日していた女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋の入国管理局の収容中に死亡した。毎日新聞が関係者から入手した、緊急搬送された時に病院で受けた血液検査やCT検査の結果を複数の医師に依頼したところ、医師らは「集中治療室での高度医療が必要なレベルで、もっと早く病院で治療を受けさせるべきだった」と指摘した。

 入管側が衆院法務委員会の議員に示した司法解剖結果には「甲状腺炎による甲状腺機能障害により全身状態が悪化し、既存の病変を有する腎などの臓器不全が加わり死亡したとするのが考えやすい」と記されている。名古屋入管が適切な医療を提供していなかった疑いが濃厚になった。下に載せた検査値は、いつどういう条件下で取られた血液の値か不明であるが、血糖や肝機能の値は極端に悪く、即刻入院を要する状態であることを示している。 

 日本に憧れて来日し、日本語学校に通い、日本人に英語を教えていたそうだが、学校を辞め、滞在資格が無くなり、同国人によるDVなどもあり、入国管理局の収容施設に入れられ、コロナで帰国の目処も立たないまま、収容され続け、その間に体調を崩し、仮放免での入院を希望したが容れられず、収容所で死亡したということである。こんな痛ましいことはない。

 報道のよれば、二度ほど外部の医師の診察も受けているようだが、検査だけで、時間がかかるからと点滴などの治療は受けられず、医師の仮放免、入院のアドバイズも無視されて、衰弱死亡したものとされている。支援団体「START」(外国人労働者・難民と共に歩む会)の顧問も、ウィシュマさんの様子が尋常でないものだったので、2月上旬頃から自分達が彼女を病院に連れていくとして仮放免を求めたものの、それでも収容が続けられた。

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  日本は国連の難民保護条約に加わっているが、難民認定率は極めて少なく、2019年の日本での難民申請者は1万375人中、認定者は44人に過ぎず、認定率はわずか0.4%で、米国の約30%、カナダ50%超えと大差があり、日本が難民にとって、その認定が非常に狭き門であることは間違いない。

 非認定者は原則、本国へ強制送還されるが、身の危険などで帰国困難な難民の人達はノン・ルフールマンの原則に従って、入管の収容所に収容されることになる。ただし、引受人のいる場合など、仮放免で外部で普通に暮らせる場合もあるが、その決定はブラックボックスの中で、その決定の是非については裁判所などの第三者機関の速やかなチェックも働き難いそうである。現在の入管行政にはかように種々制度的な問題があり、国連人権理事会の恣意的作業部会からも「国際法違反」として指摘されている。

 こうした状態の下で、入管難民法管理局の収容所では、2019年には200人超の収容者のハンスト事件が起こり、収容中の男性が死亡する例などもあった。かような事も絡み、今国会でも入管法の改正政府案が提出されているが、返って国の権限を強化し、規定に反して滞在した者の処罰まで計画されており、弁護士集団による廃案の訴えなども起こっている。

 国内の人口減少が進み、将来の国力の発展のためにも、積極的に移民政策を進め、国際化を進めなければならないこの国が、今なお単一民族だのと言って閉鎖的、内向的な態度を続け、難民の救済や移民に冷淡な態度を続けていたら、やがては世界の趨勢から取り残されてしまい、自らの発展の余地を閉ざしてしまうことになりかねないのではなかろうか。