最近、売布にある映画館で「フェアウエル」という中国映画を見た。
両親とともにアメリカへ移住して、ニューヨークで暮らす女性の元に、中国に住む祖母がガンになり、余命も３ヶ月という知らせが届く。それは大変、家族揃って元気なうちに皆で是非会いに中国へ帰りたいと思ったが、本人はガンだということを全く知らないので、急に皆が揃って帰ったりすると、本人が怪しむのでどうしようかということになった。
主人公の女性は真実を知らせるべきだというが、家族は悲しませくないからと秘密にしておこうとする葛藤などもあったが、結局、ガンのことは祖母に知らせない約束を皆でした上で、一人の孫の男の子が日本の女性と付き合っていたので、その二人の偽の結婚式を仕立て上げて、それを口実にして皆が集まることになった。
そんなこととは知らない祖母は、孫の結婚式とあって、張り切って結婚式場を決め、大勢の人を招待して着々と準備して、親族一同が集まり、結婚式を挙げることになり、主人公もアメリカではうまくいかない人生に悩んでいたが、明るく愛情深い祖母から次第に生きる力を受け取っていくというストーリー。
何も知らない祖母は結婚式を盛り上げるために、甲斐甲斐しく元気そうに振舞うが、祖母には言えない暗黙の了解を約束を守る皆は、表面的には結婚式に合わせて嬉々として行動するが、現実と虚構の間で、それぞれの立場でそれぞれが、自分なりの思いやりや、虚構とのズレをどう処理するかに悩む。
アメリカでの生活と中国の生活や風習のギャップなどもうまく表現されていた。アメリカでは一人一人が個人として認められるが、中国では社会の中の一員として認められるとした違いの言及などもあった。映像もなかなか良く、CT検査の場面など独創的であったし、一人だけの行動の画面での感情表現にも優れた画面もあった。
また、中国での墓参りでの墓場の様子や、お祈りの仕方など、日本とも似ているが、また違っている風習なども興味深かった。見る前はあまり期待していなかった映画であったが、主演の女性の演技も素晴らしかったし、思わず引き込まれるようなシーンもあり、印象深い映画であった。祖母から元気を貰った主人公がニューヨークに戻って、元気な声を上げて映画は終わった。
ただし、全てが終わった後に、ひょっこりおばあちゃんが現れて、６年後も元気でいて、運動しているところを写している試みもユニークだった。第７７回ゴールデングローブ賞を受賞している映画であったことにも納得出来る。
