どっこいしょ

 最近気が付いたのだが、この頃は何をするにもやたらと無意識に「どっこらしょ」と掛け声をかけて日常動作を始めているようである。半ば無意識で言っているのだが、気をつけてみると、先ずは朝ベッドから起き上がる時から始まっているようである。何だか掛け声をかけないと起きられないかのようである。

 これが最初で、あと1日に何回「どっこらしょ」を繰り返していることであろうか。どうも最近次第に 立ち居振る舞いが若い時のようにいかなくなって、万事がスローモーションになり、何をするにも掛け声でもかけないと、動き出せないようになったのか、余計に出てくるような気がする。

 「どっこいしょ」という言葉は疲れた体を動かす時などに発せられるもので、半ば無意識に、半ば意識して使われるもののようで、日本では広く使われている。特に老人の間では、日常非常にしばしば聞かれるる言葉である。

 元々は仏教の六根清浄から来ているものとも言われ、これが訛って「どっこらしょ」になったと辞書などにも載っているが、真偽のほどは確かでない。「どっこらしょ」「どっこいしょ」の他、「よっこらしょ」とか「こらしょ」「よいしょ」などとも言う。その他、「よいさ」「よいやさ」とか「おいしょ」「ほいしょ」「おいやさ」「おいさっさ」「ほいさっさ」なども少し違ってくるが、同じ流れの一連のものとも言われているようである。

  六根とは仏教の言葉で、「見る・聞く・嗅ぐ・味わう・触れる・思う」 の六つの感覚のことで、この六つを綺麗に清める言葉が六根清浄と言うことである。

 一体1日に何回ぐらい「よっこらしょ」と言うだろうか。注意してみると、机に向かって座る時も、用が済んで立ち上がる時も、大抵言っている。こたつに入る時も、出る時も、玄関で靴を履いて立ち上がる時も、靴を脱いで上がり框に上がる時も「どっこいしょ」「よいこらしょ」と掛け声をかけないと出来なくなっている。自然に出てくるもので、それでうまく動作が進んでいる感じである。声を掛けねば、いつまでも立ち上がれないのかも知れない。

 これだけよく使うのだから、アメリカなどではどう言っているのだろうか気になるが、同じようなことを気にする人もいると見えて、パソコンで調べてみると、アメリカに半世紀もいる人の話として、「アメリカ人は何も言わずに動いているよ」と言う返事であった。

 それはともかく、やがては「よっこらしょ」と掛け声をかけても、体が動き出してくれなくなる日が来るのではないか心配である。