どうなるGo To キャンペーン

  政府はコロナが流行しだして、オリンピックが中止になり、緊急宣言が出された頃からGoToキャンペーンと銘打って、コロナによる経済損失を一気にV 字型に回復させるという大掛かりな対策を企画した。

 ところがコロナ流行を軽くみていたのではないだろうか。緊急宣言などに続く経済の落ち込みが比較的短期間のものと見たのか、一旦立案した計画はあまり期間を置かないで実行に移さなければならないためなのか、時期を誤って実行する段取りに入ってしまったのであろう。

 コロナの流行が一時的には落ち着いたが、まだ収束には向かわず、第二波が起こる可能性が充分考えられるのに、具体的な計画を進めてしまったのが誤りであった。それも始め八月からの積りであったものを、オリンピックのために作られた4連休を利用して、前倒しして七月二十二日から実行することにしてしまったのが更に誤りに輪をかけたことになった。

 安倍のマスクの時もそうだったが、読みが浅すぎるのである。大きな予算を使うような計画はもっと慎重に、色々な先の条件まで考慮して決めるのが当然で、広い意見の集約なしに単なる思い付きで決めるべきものではない。官僚機構で綿密に計画するより、発言力が増している内閣府の発案が官僚を動かすことが、こうさせたのかも知れない。 

 案の定、コロナは七月になってから再び増え始め、一日の感染者数が先のピーク時を超え始めてきた。開始予定日は近づくし、新たな感染者数は増える。普通にに考えるなら、せめて初めの八月開始に戻して、対策を立て直すべきところだろうが、大きな予算を伴う計画で、色々な利権も絡むので、一旦決められたことを変えるわけにはいかないのであろう。

 結局感染者の多い東京だけ除外して、計画どおりに始めることになった。東京都知事はなるべく都から出ないように勧めるのに対して、国は感染防止に注意して、出来るだけ旅に出ろと矛盾したことを言うことになってしまった。

「どうするえ、旅行け、行くな、コロナ二波」

 ある人が言った。これは現代の「インパール作戦」だと。先の大戦の末期に、日本軍は中国の補給路を断つためとして、誰が考えても無謀なインドへ攻め入る作戦を行い、多数の餓死者などを出して敗退したが、それにも似た無謀な計画だと言うわけのようだ。一旦決めてしまうと、それがもうダメなことが分かっていても、最早変更出来ず、破滅まで行ってしまうことを意味しているのである。

 コロナの第二波がまさに起こらんとしている時に、「ウイズ・コロナだ」「経済と両立だ」などと言っても、既存の計画に固執するより、もう少し利口なやり方があると思われるのだが、今更計画の変更が出来ず、そのまま進めて行かざるを得ないのである。それを「インパール作戦」と言ったもので、言い得て妙である。

 もう少し機敏に物事に対応し変化の出来る組織にしておかないと、更に国の重大事に遭遇した時にも、的確に対処できず、戦前の大日本帝国の時と同様に国の進路を誤ってしまうのではないかと心配になる。

 こういう大きな計画には大きな利権が伴うもので、今回のGoToトラベルは首相官邸の今井補佐官などの立案らしいが、旅行業界の会の会長を務めるのが自民党の幹事長の二階氏であり、新聞報道によると、すでに旅行業界から二階氏側へ4,200万円の献金があったとか言われている。

 何れにしても、こういう政策の誤りで迷惑を被るのは国民である。4連休で割引もあれば旅行にも行きたいが、コロナも怖い。感染しても自己責任である。ホテルも観光業者も大勢の人に来て貰うのは嬉しいが、感染が怖いし、そのためまた閉鎖になったりしては困る。それに大手は良いが、中小の店は御利益は少ないことなどもあろう。この結果はどのようなことになるのだろうか。

 我々老人たちは、わざわざ人の動きの多くなる4連休は、GoToトラベルには悪いが、家でひっそりとしているのが、感染の心配もなく、お金も使わず、一番良いのではないかと思っている。