四季が二季になった

 四月の終わりまでは朝夕はまだ寒く、小さな電気ストーブを利用したり、ベッドでは暖かい毛布に包まれて寝ていた。流石に桜も散り、ダグウッド も盛りを過ぎて、新緑が美しく空に映えるようになると、昼間は気持ちの良い暖かさになるものの、昼と夜の寒暖差が激しく、早朝にはまだセーターが欲しくなり、書斎でパソコンを見たりするにはやはり少し暖を取りたくなる。

 ところが五月に入った途端に、急に暖かくなったと思ったら、二日には長野で30度、大阪でも27度の夏日だという。昨日までテレビでは、コロナが流行っているから、風邪を引かないようにとか、花粉症に注意してとか言っていたのに、今度は急に、まだ暑さに慣れていないので熱中症に注意しろという。そしてわざわざ、今年は皆がマスクをしているので、熱が籠り易いから一層注意するように呼びかけている。

 昔は日本は四季に恵まれていると言われてきた。四月は花の季節、五月は風薫る緑の月と言われ、暑からず寒からずで、一年でも一番良い季節だと言われてきた。ところがどうであろう。近年は地球温暖化に関係があるのかどうか、定かではないが、冬から春を飛ばして、一足飛びに夏がやってくる感じである。二日の朝方には汗をかいて目が覚め、温度計を見たら、暖房もしていないのに28度もある。起きて早速寝具を取り替えベッドメイキングをやり直さなければならなかった。  

 4月の終わり頃はもともと気象条件の変化が激しいもので、私の記憶でも4月の末頃までは暖かかったり寒かったりしながら、五月になってメーデーに出かける日当たりから急に暖かくくなった半袖シャツ一枚になってビールを飲んだ記憶もある。

 それでも昔は四月になれば花見があり、アザミやダグウッド 、ライラックその他色々な花が咲き、昼間は気持ちの良い春らしい日が続き、大抵4月半ばにはストーブも不要になったものだったが、近年は冬がそれほど厳しくないのに、寒さは4月末頃まで持ち越すようになり、春の衣替えも遅れて、4月の末ごろにまでずれ込むことが多くなったような気がする。

 そして、5月になると途端に夏がやってくる。昨年もそうだった。5月に熱中症で倒れた老人が報道されていたように思う。地球温暖化のためか、このところ夏が長くなった。5月から10月ぐらいまでが夏で秋も短く11月になるともう冬である。

 老人にとっては、以前は冬をいかに超えるかが問題だったが、近年はは夏の方がこたえるようだと言われる。今はその上に新型コロナ(Covid19)が流行っている。マスクをしていると余計に熱がこもりやすい。熱中症で救急車で搬送される老人が昨年以上に増えるのではなかろうか。

 以前は熱中症といえば暑い環境で働く人たちの職業病のようなものとみられていたが、最近はそうした熱中症より老人の熱中症の方が注目されるようになったようである。テレビでも昨年の夏にはうるさいぐらい繰り返して「老人は特に熱中症に気をつけましょう。クーラーをケチらず、出来るだけ涼しい所にいて、こまめに水を飲め」と言っていた。

 事実、私の近くでも一昨年の初夏に白寿のお祝いをした先輩が、晩秋に肺炎で亡くなられた。90歳を超えても矍鑠として元気だったが、1年前の夏に「自宅のクーラーが故障して今年の夏はえらかった」とこぼしてられたのが始まりだったのか、お祝いをした後の夏にはとうとう弱られて、秋には寝込んでやがて亡くなられた。

 人ごととも言ってられないのかも知れない。私も昨年の夏が長かったせいか、秋の初めにはこれまでになく疲れを感じさせられた。10月半ば頃から脊椎管狭窄症になり、歩行に問題を抱えるようになったのもその続きであろうか。

 若い頃だったら、夏は全てが明るく開放的で、夏休みがあるし、海もあるし山もある。どこか広々とした所へ行って思う存分羽を伸ばしたいと期待したものだったが、今となってはまた暑い暑い夏の日が際限もなく続くことを想像するだけでも少し憂鬱になる。果たして今年はどんな夏になることやら・・・。