今年の夏が思いやられる

 地球温暖化と言われ出してから、もう何年も経ってしまっている。実感としても、ここ2〜3年の夏の暑さはもう他人事ではない。毎年夏になると、熱中症で死ぬ人が後をたたない。学校で熱中症で倒れる生徒がいるかと思えば、老人は、家の中にいても、熱中症になって救急搬送されたりしている。

 昔は暑いと言っても、真夏の最中でも、せいぜい31度とか32度ぐらいが最高で、30度が一応の目安で、それ以下なら先ず先ず、それ以上なら今日は暑いと言ったものであった。冷房がなくとも、裸になって冷水を浴び、夕涼みでうちはで冷風を浴びるだけでも何とか過ごせたものであった。

 戦争中も陸海軍の制服は、夏も詰襟姿で、南方へ戦争が広がってやっと開襟の制服が用いられるようになったのである。夏休みに我々の中学校へ詰襟の真っ白な制服を着て、短剣をぶら下げた海軍兵学校生徒の先輩が、勧誘にやって来たのを何故か今でも鮮明に覚えているが、その真夏の晴れた夏空に下でも、気温は確か三十度程度だったと記憶している。

 当時友人などとの話で、アラビアなどの熱帯では、気温が体温より高い40度以上もあるそうだ。そんなところでは、服を脱いで裸になっても、外の方が暑いからダメなのだ。逆に服を着て、外気が体に入り込まないようにしなければならない。だから、アラビアの人は白いガウンの様な服を着ているのだなど、と知ったようなことを言ったりしていたが、40度は愚か34〜5度などという温度の実感もなかった。

 ところがどうだろう。近年は日本でも、真夏になると、地球温暖化の影響か、テレビでもしきりに熱中症の注意が繰り返され、水を飲め、夜でもクーラーを消すなと言われ、35度以上の気温も当たり前となり、最高は40度近くにさえなっている。

 今年はまだ6月だというのに、30度を超える気温が毎日のように記録されている。6月10日には豊岡34度、札幌でも30度とか出ている。それも、最近変わってきたことには、2〜3年ぐらい前までだったら、それこそ特別な出来事として、どこそこの温度が34度にもなったと、驚きとともに報道されたのに、今年のテレビを見ていると、33度でも34度でも、それが当たり前のように、事実だけが知らされて、驚きのようなコメントが全くつけられなくなってしまっていることである。

 これがまだ夏の始まりの6月のことであるから、7〜8月の真夏となれば、実際にどういうことになるのであろうか。35度を超えるのが当たり前になり、ひょっとしたら、今年はもう40度を超える所も出てくるかも知れない。

 昔は老人には冬が禁物で、寒い所で、脳卒中を起こして死ぬ人が多かったものだが、今では夏の方が危険なようで、熱中症で命を落としたり、熱中症にならなくても、長い過酷な夏に消耗して、秋口に命を落とすような老人も多くなっているようである。

 その暑い夏の真っ最中に、今年は更に政府が国民の心配を振り切ってまで、オリンピックをやると言っているのである。ただでさえコロナと酷暑が重なってどうなるか心配なところに、その上オリンピックが重なって、人の動きが増え、三密の機会が増えれば、どうなることであろうか。異常な暑さとコロナの流行が重なって、それこそオリンピックを途中で中止しなければならないような事態さえ起こりかねないのではなかろうか。心配しないではおれない。

 最近の日本の住居には縁側のような広い開放口がなく、小さな窓だけの気密建物が多く、庭もなく、隣家と密集して建っているので、風も通らない。クーラーをつけて冷を取るよりない。貧しい庶民は、酷暑の昼間をショッピングセンターや図書館、駅などのクーラーでしのぐようにもして来たが、コロナのために、それもままならない。マスクをしなければならないので、なおさらである。

 6月の今日でこの暑さであれば、7−8月の真夏の生活がどういうことになるのであろうか。オリンピックなど、どうでも良い、コロナにかからず、熱中症にならないで、早く済んでほしい。毎日のテレビの気象予報を見ては一喜一憂しているところである。