「緊急事態条項」による憲法改正を許すな!

 新型肺炎(2019nCoV)が発生し、SARSの二の舞かと恐れられ、指定感染症に指定され、政府による漢口からの日本人の引き揚げなどが行われている。これについての自民党などの改憲論者の発言に注意すべきである。改憲論者たちは以前から最も多くの人の同意を得やすいであろう「緊急事態条項」を掲げて、それをきっかけに憲法を改正しようと考えた来たが、まさに好機到来なのである。

  中国から帰国した邦人の一部の人が感染の有無を調べる検査を当初拒否したことなどを受け、自民党の伊吹氏は「すぐ強制措置が取れることが望ましい」とし、国民の権利を一時的に制限してでも公益を守る必要性が出てきた具体的な事案として、これを「法の不備」を埋めるための「改憲論議の実験台にしては」などと言い出していることには厳重に注意を払うべきである。

 「緊急事態条項」とは国家の有事の際や、大規模自然災害、テロなどへの対策として、私権を制限し公益を優先させて国家の有事に対処しようというもので、自民党が策定した改憲4項目の一つにも入っており、改憲論者が以前からこれを憲法改正の突破口にしようと策略してきたものである。

 当然、野党だけでなく公明党も強く反発している。共産党小池晃書記局長は、政令施行後は一定の行動制限が出来ることも踏まえ「憲法を変えないと対策が出来ないというのは筋違いの暴論だ」と批判している。

 事実、憲法を改正するまでもなく、過去においても、SARSやMARSその他の場合にも、現行の指定感染症法などで十分対処出来てきたし、検疫法上の「検疫感染症」などの指定もあり、必要とあらば、新しい法的処置も考えられるのであり、感染病の蔓延により憲法を改正する必要は微塵もない。

 ところが、国民民主党玉木雄一郎代表も29日の記者会見で「本人の同意も必要だが、権利を制限しても、大きな公益を守るため、しっかりとした対応をする局面だ」と述べ、改憲とは別の文脈だったが、緊急時の私権制限はやむを得ないとの認識を示しており、日本維新の会馬場伸幸幹事長も、「この感染拡大は非常に良いお手本になる」発言しており、公益を守るための私権の制限には同調し易い面があるのも現実であろう。

 しかし、民主主義を守り、人権を擁護するためには私権の制限には余程慎重でなければならない。緊急事態条項で憲法を改正しようとするのは、まさにヒットラー独裁政権を樹立した時の方法であったことを忘れてはならない。

 緊急時の混乱に乗じて憲法改正を強行しようという動きに対しては、余程、敏感に反応してその企図を打ち砕かなければならない。一旦憲法が改正されてしまうと、最早、民主主義は永久に失われ、後戻り出来ずに、独裁国家破局に向かって走り出すのを誰も止めようがなくなることを知るべきである。

 因みに、指定感染症とは「都道府県知事から患者に医療機関への入院を勧告したり、就業を制限したりできる。従わない場合は強制的に入院させることもできる。指定の期間は原則1年間で、最大1年間延長することが可能。他にも、感染が疑われる人が見つかった場合、法律に基づいて検査や診察、一定期間の健康状態の報告を指示することができる。これらに従わない場合は、罰則を課せられる。入院の医療費は公費負担となり、患者は全数報告の対象となる」などというものである。