どうしてPCR検査が増えないのだろう

 コロナ感染がいよいよ爆発的に増えだして、政府も緊急事態宣言を出さざるを得なくなったが、未だに経済と両立させようと、中途半端な考えが続き、行動制限を主として飲食関係のみを抑えて、第一回に緊急事態宣言時より規制範囲をを狭めている。

 そのような政府の姿勢もあり、国民の慣れもあって、今回は前回より街の人出も減らず、政府の言うように、一ヶ月で目処がつくだろうと思っている人は殆どいない。とうとう3月7日まで緊急事態を延長せざるを得なくなったようである。

 感染症の対策が、先ずは感染者の発見と、隔離であることは誰でも知っている。コロナに対してはPCRという検査で感染者を見つけることが出来ることもわかっている。現にコロナ対策で成功した国はどこでも、このPCR検査を広範に行っていることも周知の事実である。

 当然、この国でも、初めからPCR検査を広範に行えという声も多かった。それにも関わらず、日本では、何故かクラスター対策にばかりに力が注がれ、PCR検査は重症者にしか行われない傾向がずっと続いた。

 幸いSARSやMARSを免れた日本は、そのためにPCR検査での対応に乗り遅れたこともあるが、流行の初期の発病者がまだ少ない時には、クラスター追跡だけでも何とか間に合った。しかし、感染者が増え、その上、無症状の感染源の存在が多いことがわかると、クラスターの追跡だけでは、コロナ感染の拡大を止めることは困難となった。当然、多くの人がPCR検査の拡充を唱へ、政府も同意したにも関わらず、何故か「無症状感染者を検査する意味ない」「PCR検査は不正確」「陽性者増加は医療崩壊」と言うPCR検査拡大反対の声に押されて、PCR検査はいつまでたっても増えなかった。

 日本でそれが出来ない理由があったのであろうか。 PCR検査の機器は、日本ではその自動検査装置も開発され、外国へ輸出もされていたぐらいなので、検査機器が足りないためとも言えないし、検査する人間が足りないこともない。検査対象が多過ぎるというのであれば、多人数の検体をパックして検査する方法なども考えられる。現にコロナ対策で成功した国では、千万人単位の検査を一気にやっている所もある。日本だけ出来ないことはない筈である。

 それでも、これだけコロナが流行して、緊急事態宣言まで出ていても、まだ、PCR 検査は、あちこちで広範な検査をやろうと試みが出ている段階で、国を挙げて広くやろうという体制にはなっていない。首相の演説でも特段取り上げられていない。自民党が党内の若手に陽性者が出て、全員にPCR検査をすることになり、一般国民がしたくて、もして貰えない検査を、自民党員だけが全員タダでするとは何事かと、非難の声が上がっているぐらいである。

 何故なのであろうか。初めの頃には偽陽性偽陰性の問題を言う人もあったが、どんな検査にもそれはつきもので、検査はそれを考慮した上で用いるものであり、感染者が今のように増えた場合には問題にならない。政府も国民も、広範な検査が必要と言いながら、ここまで来ても検査が増えないのは、検査を指示し、実行するシステムに問題があるからと言わざるを得ない。

 PCR検査は厚労省ー国立感染研ー保健所といった一連の組織が主導権を握っているので、その一連の組織の動向に左右されているのではなかろうか。今や保健所はクラスターの追跡や隔離、入院などの手当てでパンクしており、それがPCR検査の抑制に働いているのであろうか。

 それなら、最近は民間でPCR検査をする所も出て来たので、そういう所での検査を増やし、費用の補填をする方法も考えられる。 兎に角、今は感染経路を絶って、広範なPCR検査を行い、感染者の発見と隔離を徹底することが緊急に必要である。

 たとえ、ワクチンが利用出来るようになったとしても、その効果が現れるには少なくとも、数ヶ月以上はかかると見るべきであろう。今、大事なことは感染予防策を徹底することとともに、PCR検査を大規模に行い、感染者の発見を確実にし、隔離、治療につなぐことである。