どう継承 天皇の戦争責任

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 朝日新聞の声欄に写真のような記事が出ていた。筆者の伯母が沖縄で戦死した夫を思って読んだ悲痛な歌である。

「大君の今におわすを見るにつけ 骨一箇だに無きわが夫想ふ」

 年月の経つとともに既に亡くなられた戦争経験者も多いであろうが、あの戦争を通じて同じような思いを抱かされた人がどれだけ多かったことであろうか。

 敗戦までの大日本帝国万世一系天皇が治める神国であり、天皇は現人神であり、国民は臣下であり、陛下の赤子であった。神の国だから国難に際しては天佑神助があり負けることがないとされた。

 陛下と聞いただけで、直立不動の姿勢をとらねば殴られる。「上官の命令は全て陛下の命令」と心得よと言われて、滅茶な上官の命令にも口を挟む余地を与えない軍隊組織があった。

 そこに集められた馬より安い一銭五厘の兵隊を使った、現地調達で補給を考えない侵略戦争が行われた、等々。あまりにも無謀な戦争に駆り出され、天皇陛下の御為に「身は鴻毛の軽さ」と思わされ、「天皇陛下万歳」と言って死んでいった人がどれだけいたことだろう。そして、その人が支えていた、残された家族の悲嘆や過酷な運命。それらを思い出すだけでも、未だに憤りで胸が痛む。

 その何千万にも及ぶ戦争被害者に対して、敗戦後の昭和天皇は全国を回って「ああそう」を繰り返しただけで、ついに「天皇陛下万歳」と言って死んだ兵士や戦争被害者に謝ることもなく、何も言わないで死んでしまったことに無念の思いを感じた人も多かったであろうと思われる。

 死者に鞭打つことはないが、水に流してしまえない現実の苦しみや無念さを今も秘めている人は多い。戦後に、天皇を始め、国の責任者たちが、遂に戦争責任に真正面から取り組むことなく、うやむやに済ませてしまったことをしっかりと銘記しておくべきであろう。

 そのことが、未だにこの国の行く手に暗雲を漂わせている根源だとも言えるであろう。それぞれの家族と戦争の関わりを、もう一度振り返ってみて欲しいと思われてならない。

 戦争は忘れてはならない。戦争は二度としてはならないことを銘記しておきたい。戦争を知らない人たちも、このことだけは覚えておいて欲しい。