負けてよかった

 このところ新聞もテレビもサッカーのワールドカップ一色と言っても良いぐらいだと書いたが、今回は日本チームが予選を勝ち抜いて2年ぶりに決勝トーナメントにに進出したので、これまでになく熱が入ることになったのであろう。

 日本チームが勝ち進むのは嬉しいことだが、時差の関係で試合の中継がいつも真夜中なのが問題である。ついテレビにかじりついて見ていると朝起きるのが大変である。昼間適当にサボれる学生なら良いが、普通の勤め人なら、ただでさえ長時間労働で寝不足気味な上に、この夜間のサッカー観戦は体にこたえる。見ないと余計に気になって眠れないし、仲間の話題の中間はずれにもなる。

 そうかと言って見れば興奮して徹夜ということにもなりかねないし、あくる日が大変である。そんなのが続いたらもうやってっれない。それでも試合があれば気になって眠れない。電車の中で居眠りするぐらいなら良いが、車の運転で事故を起こしたり、大事な仕事でしくじったりしては元も子もない。

 私はサッカーそのものにはあまり関心がない方だが、やはり日本チームが勝ち進んで決勝トーナメントにまで出るようになると、その勝敗が気になる。昨日は4時ごろ目が覚めたのでテレビをつけてみると、日本が2対0で勝っているではないか。 それももう後半戦のようだ。

 決勝トーナメントでは勝つのは難しいのではないかと思っていたが、勝っているではないか。これは素晴らしいと思ったが、同時に、勝っていることは嬉しいが、これではますます応援がヒートアップして大変なことになるぞ、日本が負けるまで止まらないのでないかといささか心配にもなってきた。

 しかし朝起きてニュースを見ると、後半で引繰り返されて日本が負けていた。折角ここまで来たのだからもう少し勝たせてもやりたかったけれども、これぐらいのところが実力なのではなかろうか。ここまで来ただけでも歴史も浅い日本チームとしては上出来だったのではなかろうか。

 加熱したサッカー応援が落ち着けば、これで会社の仕事も普通に進むことになるであろう。これからオリンピックで、政府はますますスポーツを盛り上げようとしているが、スポーツはあくまで娯楽であり、リクリエーションの範疇のものであることを忘れないで欲しい。『頑張れ!日本!』も良いがあまり加熱せず、適当に時に頭も冷やして楽しみ、スポーツに振り回されることのないようにしたいものである。

 見ている時には興奮して応援するのも良いが、勢い余って他人にまで同調を強いたり、必要以上に盛り上がって国の名誉などにまで結びつけず、終わったら冷静になって静かに振り返って余韻を楽しむようにしたいものである。

 それにサッカーの嫌いな人も、関心のない人もいることも忘れないでほしい。スポーツはするのも、見るのも、楽しむためのものであり、国の名誉をかけるようなものではない。これ以上の加熱は周りに迷惑を及ぼすものである。そういう意味で負けてよかったとつくづく思った。