地域の画廊巡り

 近頃はどこの市や町にも小さなギャラリーや画廊があり、地域のアーティストや美術愛好家たちの発表の場所になったり、友人知人の交流の場所になったりしている。

 私の住んでいる池田市にも、小林一三記念館・逸翁美術館や、カップヌードルミュジーアム池田、市立歴史民俗資料館など比較的有名なものの他、池田市の中央公民館、市民ギャラリーいけだ、ギャルリVEGAなどが池田駅やその周辺にある。

 また隣駅の石橋阪大前駅の近くには画廊ぶらんしゅやGuliGUliの画廊、隣町の川西には駅にギャラリかわにし、駅のすぐ近くには画廊シャノアールというのもある。以前は散歩や用事のついでに、気軽に歩いて訪れていたものであった。

 更には、近隣の伊丹や豊中、少し足を伸ばせば宝塚にも、いくつも美術館やギャラリーがあり、良さそうな催し物があればなるべく訪れるようにしてきた。

 歳をとって足も衰えてくると、もう遠方の美術館などへ行くのは諦めなければならないし、京都や大阪、神戸などの大きな美術館にも、行き帰りの行程を考えると、どうしても足が遠のき勝ちとなる。

 そんな時に、近くのギャラリーは大きな助けとなる。池田駅の周辺のギャラリーには散歩の時にでもいつでも立ち寄れるし、月に一度はギャルリVEGAでクロッキーの会にも行っている。書道や手芸その他の展示のこともあるが、いろいろな絵画の同好会や個展などには、時に興味深い作品を見ることが出来るのも楽しみである。知人の作品が並ぶような時には欠かさず赴いている。

 ただ、GuliGUliの画廊は足場が悪く、レストランの傾斜した庭の庭石を辿って行かねばならないこともあって、レストランを利用した時に一度行った以外には、これまで訪れたことがなかった。ところが先日女房の90歳の誕生日祝いで訪れた時、丁度その日から新しい展示が始まるというので食後にギャラリーも覗いてみることにした。

 松田彰という人の個展であったが、この人は東日本大震災の直後から、思い立って毎日欠かさず18cm四方の紙に白黒のアブストラクトの絵を描き始め、これまでに全部で4千枚以上になるそうだが、それを床や壁に並べて展示されていた。並べてみると、それがまた全体として白黒の面白い表現になっていて思わず引き込まれた。

 バリ島に魅せられて、近年は始終バリ島へ行ってられるそうだが、会話も弾み、「一緒にバリ島へ行きましょうや」という話にもなった。バリ島は同じインドネシアでも、イスラムと違い、ヒンズーの影響が強く、また違った景色や風習があり、話しているうちに興味をそそられ、以前にった旅の印象が蘇った。彼の曰くに「関空へ着いた途端に、同質性の日本人ばかりを見ることになり、がっかりする」と言っていたが、よく分かるような気がした。

 また、階下の部屋では、女性の作家がマダガスカルのラフィアという木の繊維で、日本の蓑に似たものを作っている展示もあったが珍しいので興味が湧いた。

 さらにこの日は、Guli Gulからの帰途、石橋で画廊ぶらんしゅにも寄ってみた。ここでは黒田峰夫という人の彫刻展をやっていた。手足のないルコルビジェに似た細長い人物の彫刻展だったが、天井の高いこの画廊にもぴったりの大きさの展示でびっくりさせられたが、以前にもここで展示をしたことのある作家で、それに合わせて上での展示だったようである。

 ローカルな画廊巡りも、当たり外れは大きいが、時に結構面白い作品や作家に会えるので楽しいものである。