豊中音楽コンクール

 大阪音大のカレッジ・オペラハウスで開かれた「豊中音楽コンクール受賞者記念コンサート」なるものにに行ってきた。毎年秋には豊中市は「とよなか音楽月間」として色々な催しをしているが、その中でここ数年来、大阪音大が協力して「豊中音楽コンクール」を実施している。

 ピアノから、声楽、管楽器、弦楽器に至る各部門のコンクールで、今年は全部で202名の応募があり、その中で選ばれた奏者による受賞記念のコンサートが行われたのである。

 各部門で優勝した人達だけあって、皆なかなかの演奏であったが、殊にピアノやヴァイオリンは底辺の応募者が多いだけに、より優れた奏者が選ばれているのであろう。最初の高校生部門のピアノから難しい曲を素晴らしく弾き、感心させられた。

 大学部門の優勝者となると、もはやプロとしてでも通るのではないかと思われるような達者な演奏であった。特に最後のトリを飾った阪大2年生という男子のヴァイオリンなど、態度も堂々たるもので、既にプロとしてでも通用するのではないかと思わせる好演ぶりであった。

 以前なら、学生の音楽コンサートだから、こんなものだろうという感じであったが、日本の学生の音楽レベルも素晴らしく向上したものだと感心せざるを得なかった。考えてみれば、戦後に子供達にピアノやヴァイオリンを習わせる人達が多くなって来てから、最早60〜70年も経っているのである。

 その頃から拡がっていった日本の音楽の普及の底辺は、最早、その頃の親たちの子供や孫たちに受け継がれ、今では、子供の頃からクラシックに親しんだ親たちが、その子供たちに早くから音楽に親しませ、習わせるといった、音楽に馴染んだ環境に育った若者がどこにでも溢れるようになり、その広くなった底辺の中で優れた走者も育ち易くなって来たのであろう。

 こうして、殊にピアノやヴァイオリンは豊中だけでも奏者の底辺が広いので、その優勝者ともあれば素晴らしい演奏をしても不思議ではないのであろう。つくづく日本にもクラシック音楽が根付いてきたことを感じささられた次第であった。