日本の将来は大丈夫か?

 1945年の敗戦の後、朝鮮戦争ベトナム戦争を手掛かりに、戦後復興を遂げ、急成長した日本は、20世紀の終わり頃には「JAPAN as No.1」と言われるぐらいにまで発展し、一億総中流と言われるような時代も経験したが、世紀末のバブル崩壊から立ち直れず、もう30年近くも経済成長から見放され、停滞が続いている。

 現在の新型コロナの流行前から、国は巨額な財政赤字を抱え、既に人々の給与水準も先進国の中で唯一伸びず、平均年収はOECD國中24位にまで落ち、GDPも中国の3分の1程度になっている。少子高齢化も進み、人口も減少しつつあり、生涯独身者も増えている。

 しかも、戦後70年を過ぎてもなお、安保条約や日米地位協定によるアメリカへの従属関係は変わらず、憲法を超える特権を許し、沖縄をはじめとする多数の基地を提供するだけでなく、アメリカの言うなりに、アメリカから高額の武器を買い、米軍に従属した自衛隊を強化し、アメリカの極東戦略の前線基地としての役割を続けている。

 これに合わせて軍備増強、国内法の改正などを積み重ね、憲法改正を目論み、アメリカへのより一層の従属へと走る政府に対して、憲法改正に反対し、民主主義を守り、完全な独立と、平和な生活を守ろうとする国民の声もまだまだ強いが、政府は強引にそれを打ち崩し、一段一段と一党独裁の、戦争の出来る国へ導こうとしている。

 世の中は次第に戦前のいつか来た道に似てきている。言論は自由と言いながら、NHKをはじめとする新聞やメディアの政府批判は抑えられ、学術会議会員の任命拒否は戦前の学問の自由の抑圧と同じだし、道徳教育の導入、教員への締め付けなど、教育への政府の干渉も強まるばかりである。

 この傾向の果てに何が待っているのか?「歴史は繰り返す」と言われるが。私のような戦争体験者にとって一番恐れることは、この道が、再び正義の名の下に、今度は日本人がアメリカのために血を流さねばならない日が来ないかという恐れである。

 日米安保条約のもとで、日本はアメリカの核兵器をはじめとする軍備によって守られているとされているが、アメリカにとっては、日本はアジアの橋頭堡に過ぎない。経済的に如何に重要な拠点であっても、アメリカにとって必須で不可欠な土地ではない。

 戦前には、フイリピンはアメリカの植民地であり、アメリカのアジアにおける拠点だったが、日米戦争の初期に不利とあらば、We will returnといって、簡単に引き下がった例でもわかるように、米軍が不利になっても、日本を手離さない保証は何処にもない。自国を守るために必要とあらば海外の拠点を手放すのは常道であろう。

 しかも時代は既に移り、アメリカが世界の盟主だった時代は過ぎ去ろうとしている。最早「核の傘」が日本を守ってくれるというのは幻想に過ぎない。日本が生きていくためには、独立して、自主的に、真の平和外交を確立して行くよりないのではなかろうか。

 目標は現状を見れば、泣きたくなるぐらい遠いが、それ以外に、明るい日本の将来の展望は見当たらない。政府はこの従属国の矛盾を、必死になって沖縄に押し付けて隠そうとしているが、現状を正しく認識して、将来へ向けて努力していくよりないのではなかろうか。