ウイーン・モダン展

 今春東京であったクリムト展は見る機会がなかったが、秋に大阪の国際美術館でも、クリムト、シーレの展覧会があることを知り期待していた。

 殊にシーレの本物を見る機会は少ないので、開催が始まってすぐに見に行ってきた。しかし、展覧会は思惑とは違って、日本オーストリア外交樹立150周年記念として、「ウイーン・モダン・・・クリムト、シーレ世紀末への道」と題したもので、18世紀末から今世紀へかけての、ウイーンのアートの歴史を紹介するようなものであった。

 ナポレオンによるウイーンの占領の頃から、マリア・テレサの時代、啓蒙主義の時代を経て、クリムトなどによる分離派の運動まで、絵画だけでなく、家具、調度品など、その頃の絶頂を極めたウイーンのアートや文化の変遷などを見せてくれる展覧会で、期待を裏切られたが、思いのほか良い催しであった。

 そんなわけで、クリムトやシーレはずっと後の方になって出てきただけといった感じであった。しかも、クリムトの絵画は大きなものは一点だけといことだった。しかし、シーレの絵では、少数ではあったが、これまで知らなかった自画像や「ひまわり」だとか「画家の部屋」などが見れてよかった。

 シーレの絵は何度見ても魅力的だが、彼は実社会でも色々問題を起こした人物のようで、絵だけ見ても常人にはない違った才能を持っていることが判った。「ひまわり」とか「画家の部屋」など、ゴッホと同じ対象を扱った絵を比べてみても、二人とも普通でないものを持っているが、二人の間にも、また、それぞれに違った特長が見られた興味深かった。

 それはともかく、時代順に展示されており、絵画だけでなく家具や彫刻、食器などの展示もあり、説明も親切で、世紀末を中心とした絶頂期のウイーンの生活や歴史が感じられ、リンク・シュトラッセ万国博覧会などに伴う町の変貌、多くの斬新な建築物などと盛り沢山で、懐かしいものも多く、飽きずに見せて貰えた。おかげで、ヘトヘト、地下3階のジャコメッティの展覧会場へ行って、しばらくへたり込んでしまっていた。