コスタ・リカの奇跡

 中米のコスタ・リカという小国が軍隊を廃止して、平和に暮らしているという話を以前から聞いていたので、箕面市のホールで「コスタ・リカの奇跡」というコスタ・リカの紹介映画があるので見に行った。

 アメリカが自分の庭のように振舞っている中米で、コスタリカが1949年にどうして軍隊を廃止して、その後アメリカの侵略戦争などが世界的に多かった時代に、平和にやってこれたのか疑問だったが、これまでコスタ・リカについての詳しい話は聞いたことがなかった。

 近年のアメリカ近辺の歴史を見ても、戦後70年に限って見ても、グアテマラ侵攻を始めとして、キューバ、ハイチ、ドミニカ、ニカラグアパナマからグレナダまで、中南米の国でアメリカに侵攻されたり、介入を受けなかった国はないのではなかろうか。そんな中で、コスタリカだけが自ら軍隊を廃止して、侵略もされず、どうやって国民を守り、平和を維持し続けてこられたのかが不思議でならなかったので、興味深く映画を見た。

 ただ映画は色々な人によるコスタ・リカの歴史に沿った解説の話が多く、字幕も読みにくく、その上、こちらのコスタ・リカの歴史についての前知識が乏しかったこともあって、十分理解出来たとは言えなかったが、単に軍備を廃止し、そのお金を教育や医療など回したと言っても、国の歴史であるから文字通りのような綺麗事である筈はなく、いろいろな紆余曲折の上、複雑で困難な過程を経て、何とかやっと軍隊なしで平和を維持して来たもので、今なお多くの問題も抱えている現状を垣間見ることが出来た。

 軍備を廃止したきっかけも、もともとクーデターで勝利した後に、前政権の反撃を止めるために、それまでの軍隊を廃止して、自分たちの警察力や民兵の組織などで自分たちを守るようにしたのがことの始まりだったようである。

 その後も正確ではないが、ニカラグアに攻め込まれたり、アメリカに同調して自国内にニカラガ侵攻のための基地を置かされたり、アメリカのために警察軍を外国に派遣したりもしているし、アメリカに同調して海外派兵?を決めた大統領を学生が憲法違反だとして裁判を起こして勝訴し、その決定を撤回させるようなこともあったようである。

 また、軍事費を教育に回して教育を無償化し、大学なども作ったが、1990年以降は麻薬の密売などが増えて治安が悪化するなど、いろいろ問題も抱えているようで、なかなか平穏無事な国というわけにもいかないようでもある。軍隊は廃止しているが、治安維持のための警察力は持っているし、必要なときには徴兵も出来ることになっているようである。

 四国と九州を合わせたぐらいの国土で、人口も500万足らずの小国なので、日本などとは事情が異なるが、わがままな大国であるアメリカのお膝元にありながら、独立を保ち、アメリカの要求を蹴ったりしてでも、軍隊なしで平和を保っている姿には参考にすべき点も多い。

 日米条約はイラクアフガニスタンととアメリカの条約よりも、アメリカに有利な不平等な条約と言われているが、日本ももう少し毅然として、アメリカから独立して、アメリカに言われるままの軍備増強よりも、教育や社会福祉に予算を回し、国民のための政治に目を向けて欲しいものである。