エスカレーターの事故

f:id:drfridge:20170715114706j:plain

 つい先日エスカレーターの事故で死亡者が出たことが新聞で報告されていた。概要は図のように車椅子に乗った人を男性が押して、上りのエスカレーターを登って行ったが最後の所でわずかな段差に車椅子が躓き,車椅子ごと男性共々転倒し、エスカレーターを下方に落ちていき、後方から登ってきた女性にぶつかって突き飛ばし、女性も一緒に下まで落ちてしまったようである。女性は死亡、車椅子の人と押していた男性も大怪我という大惨事となったそうである。

 日頃はエスカレーターなど階段と同じようになんの気遣いもなく利用している人が多いが、エスカレーターはやはり大型の動く機械であり、間違えばこのような事故にもつながりかねないことを知っておくべきであろう。

 昔、私がエスカレーターで危険な目にあったことがあるのである。もう戦前のことであるが、大阪の梅田の地下鉄と大阪駅東口を結ぶエスカレーターが今でもあるが、同じ場所にあった戦前のエスカレーターでの話である。

 大阪駅の方から地下鉄に乗ろうとしてエスカレーターを降り始めた時に、上に旅行用の大きなトランクを持った人が現れ、私の上後方からエスカレーターで降りようとしていた。今から考えると、その人はトランクが大きかったので、まずトランクを先にエスカレーターのステップに乗せて、それから自分も乗ろうとしたのであろう。今と違ってエスカレーターも今ほどポピュラーでなかったので、その人も慣れていなかったのかも知れない。 エスカレーターが動いているので、体が乗り遅れてトランクとの距離が離れ、本人は上に止まったままで、手が離れたトランクだけが宙返りして落ちてきた。

 今と違って人も殆どいなかった頃で、何となしに私が振り返って見ていたから良いものの、私の後ろから大きなトランクが宙を回転しながら落ちてくるではないか。びっくりして飛び降りるようエスカレーターを下まで走って降りたので難を逃れたが、後ろを見ずに降りていたら、知らずに落ちてきた大きなトランクに跳ね飛ばされるか、その下敷きにでもなっていたかも知れない。

 その時はホッとしてそのまま済んでしまったが、後から思い出す度に背筋が凍るような気がしたことを今も覚えている。エスカレーターも間違えれば飛んだ凶器になりかねないことをその時学んだ。

 そんな経験があるので、一頃、若い奥さんたちが乳母車を押して乳母車を前方にしたまま平気でエスカレーターを降りて行くのを見て、身の竦むような思いがして、出しゃばって注意したこともある。実際にも乳母車のエスカレーター事故もあったようで、最近では百貨店などでも「乳母車はエスカレーターは危険なのでエレベーターおご利用ください」と放送している。

 最近それよりよくあって危険だと思うことは、大きなキャリーバッグを持った旅行者などである。エスカレーターを降りるのに自分が下のステップに立つのでなく、自分の前の一段下にバッグを置いて乗っている人をよく見かけるが、もし急にエスカレータが止まった時など加速度がついてもいるし、自分で大きな重い荷物をコントロール出来ないので甚だ危険である。事故にもつながりかねない。

 空港や駅の降りのエスカレーターでは大きなキャリバッグを持っている人より下には立たないように先を譲ってそういった人より後から降りるようにしたほうが安全である。

 ただ、これまでは降りのエスカレータのことばかり気にしていたが、今回のような事故のことを考慮すると、登りでも降りでも大きな荷物を持った人の下方は避けておいたほうが良さそうである。また、よく放送しているようにエスカレーターに乗る時には必ず「手すりのベルト」に捕まるようにするのがいざという時に安全だ」と思われる。

 なお、エスカレーターは立ち止まって利用するように設計されているそうなので、なるべくエスカレーターを歩いて登ったり降りたりするのも避けたほうが良さそうである。今度の事故以外にも、時にエスカレーターが急に止まって利用中の人が事故に巻き込まれたという報道は時として聞かれる。

 事故は思わぬ所で、思わぬ時に起こるものである。平素使い慣れているものでも油断は禁物と考えて置きたいものである。