「週刊事実報道」と称する新聞が宣伝紙をポストに入れていった。いつもあちこちの広告が入れられるので、また邪魔なと思って捨てようとしたが、見出しの記事に思わず引き込まれた。
見出しが「医療崩壊で死亡率改善」とあったからである。最初の記事は財政破綻した地方自治体として、一時新聞誌上を賑わした北海道の夕張市のことで、財政破綻のために市立の総合病院が閉鎖に追い込まれ、19床の診療所だけになってしまい、救急患者の受け入れも出来なくなったが、三大死因による死亡率が減り、一人当たりの医療費も減ったと書かれている。
おかしいなと思ってよく見ると、ガン、心臓病、肺炎などでの死亡が減り、老衰死が多いということらしい。これなら医療の受診の機会が減り、老人が多いので検査や治療を十分受けないまま亡くなり、昔のように老衰死とされた例が多くなったということで、医療にまで見放された辺境の老人の実態を表しているもので、決して喜ばしいことではない。医療利用の機会を奪われれば医療費が減るのも当然であろう。
ただ、この記事はそれに続く、「過剰な健康診断が病を増やす」という見出しにあるように、記者の狙いは過剰な医療が患者の死亡を増やしているのではないかという疑問についてが大筋になっているようで、夕張の件は少し勇み足だったようである。
これに続く「毎年健康診断や人間ドックを受けている人ほど健康のリスクが高まる」とした元慶応の近藤誠氏の意見を取り上げたり、イスラエルやコロンビアなどで過去に医者のストライキが起こった時に、返って死亡率が減った事例などを取り上げて、過剰な医療が病人を増やし死亡率をも悪化させている可能性があるのではないかと示唆していることは無視してはならない点である。
現在では医療も全く資本主義に取り込まれて、科学を根拠にしながらも、どれだけ収益を上げられるかという製薬会社や医療機器メーカーに左右されて、医療そのものが社会的資本を逸脱して、資本主義的産業としての面が先行している面が多く、真の需要に的確に答えられなくなっっている面が強く、その結果が有害無益な医療まで含みかねない格好になっていることを知るべきである。
上記の例はこういった現代医療の歪みの結果を垣間見ているものであろう。あらゆる面で頭打ちになった資本主義は最後の発展分野として、己の肉体をも貪って生き延びようとしているかにも見える。
医療にも批判的に付き合わないと命に影響することも知っておくべきであろう。