あべ安倍内閣の支持率はなぜ高いのか

 新聞などによると最近の安倍内閣の支持率はJNNの世論調査では昨年の暮れに比して6%上がり、67%になったと言われる。

 安定した政権運営が国民の高い評価を得ているからだといわれ、昨年暮れの韓国による釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置に抗議して駐韓大使及び釜山総領事を帰国させた対応なども背景にあるようだとされている。

  安倍政権については、ここ2〜3年の間にますます強引な政治姿勢を見せるようになり、アベノミクスの効果が上がらないのに道半ばでさらに推進するとするのはまだ良いとしても、憲法解釈を変えてまで、秘密保護法や戦争法案と言われる安保関連法案を強行採決して戦争のできる国にし、原発を再稼働し、メディアに干渉して言論の萎縮を引き起こし、沖縄の民意を示した選挙結果を無視して米軍基地建設を強行するなど、多くの国民の反対の声にも逆らって何処までもアメリカ追随姿勢で進んでいるのにである。

 アメリカ大統領が予想に反してトランプ氏になってからの安倍内閣のアメリカ追随姿勢は眼に余るものがある。クリントン大統領と思っていたのがそれまで無視していたトランプ氏と決まって慌てて就任前に挨拶に行ったり、早期の首脳会談を目指してその土産に日本の年金基金を利用してアメリカの雇用を70万人増やす提案をして媚びを売るなど、国民を無視して宗主国に頼り、そのポチになろうとする姿があまりにも哀れである。当然社会的に反対のうねりも大きいことは多くのデモや集会、各種のメディアを見ても明らかである。

 しかし、それにもかかわらず。支持率がこれだけ高いことはなぜか。これを無視してはならない。安倍内閣を支持する人がこれだけ多いという現実をも直視するべきである。

 選挙制度の問題もあるが、現実に社会を動かす選挙では、いつも政権側が勝ち、反対勢力が涙をのんできたのがこれまでである。この力関係を逆転させるためにも、事実を直視し、世論の政権支持率の高さの原因を明らかにし、いかにそれを打ち砕くかを真剣に考え、実行しなければ反対の声が実を結ぶことはありえない。

 Post-Truthという言葉が広がる状況を知り、反知性主義ポピュリズムの依って立つ背景を知らなければならない。戦争を経験した世代が亡くなっていき、資本主義が独占的な金融資本主義となり、格差が極端に広がり、IT, ARやIoTの時代になるなど、新しい社会の変化が人々の生活や願望を変えていく世界の流れを知るべきであろう。ヨーロッパでも右翼勢力の台頭があり、アメリカ大統領にトランプが選ばれた背景も知らなければならない。

 こういった世界的な潮流の上に、日本の特殊性についても考えなければならないであろう。日本では江戸時代から長らく続いてきた「村社会」は戦後も「会社社会」として生きながらえ、西欧的な個人が確立することなく馴れ合い、もたれ合いの傾向の強い社会が今尚続いている。 それに依って、業界ぐるみの権益を通じての権力との結びつき、馴れ合い社会 補助金政治などが未だに強く、本音と建て前とが異なり、個人的な論理よりも集団的な馴れ合い権益が優先し、それが政治を動かす強い勢力となっている。

 したがって、個人的な正しい意見よりも権益につながる業界の意見が優先するので、正論も業界内では無言の圧力で封殺されることとなり、小選挙区制をはじめとする政治体制により少数派は無視され、金まみれの村社会制度による政治権益などのために真の対抗勢力が育ちにくいこともある。

 そこに相対的な支持、無関心、投票率の低さ(庶民の諦め、無関心)なども絡んできている結果が現在の支持率の背景にある事柄ではなかろうか。最近の SNSの世界では政府批判の投稿に避難の声で炎上することさえ起こっている。

 秘密保護法、安保関連法案、テロ等防止法などの政府の立法に加えて、メディアや自治体の日和見主義や萎縮、教育への干渉、右翼勢力の台頭など、次第に戦前と同じような様相を呈して来ている。

 これを覆すには広範な国民の支持を背景にした全野党の共闘しかないだろうが、果たしてどうなるであろうか。私はもう死んでいないであろうが、再びあの惨めな戦争にだけはなって欲しくないものである。敗北主義と言われるかもしれないが、今は人々の叡智に頼るしかないのが情けない。