危機を煽る政府

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  政府は政府広報で6月23日から4億円近いお金を使って北朝鮮からミサイルが飛んできたらどうすれば良いかという避難方法のCMをテレビで流し、インターネットでも見えるようにしたそうである。

 そのCMの概要は、「弾道ミサイルが日本に落下する可能性がある場合、『Jアラート』(全国瞬時警報システム)を通じて屋外スピーカーなどから国民保護サイレンと緊急情報が流れます」とし、次のように行動するよう推奨している。
・屋外にいる場合、頑丈な建物や地下に避難してください。
・近くに建物がない場合、物陰に身を隠すか、地面に伏せて頭部を守ってください。
・屋内にいる場合、窓から離れるか、窓のない部屋に移動してください。

というものである。少しでも被害を減らすための対策ということなのだろうが、「物陰に身を隠す」「地面に伏せる」という行動が、どれほど効果があるのか疑問視する向きも多い。「政府広報オンライン」には、さらに詳細な説明もあるようである。
 私のような年寄りには、思わず、かっての戦時中の政府の勧めた、空襲に対する対策が蘇ってくる。「防火用水を備え、バケツリレーで消火しろ」とか、「木造家屋の床下に穴を掘って防空壕にしろ」とか、実際に役に立たないことばかりか、危険を増すだけだったことを思い出す。
 今度のCMも政府は北朝鮮の核・ミサイルへの国民の危機意識を高めることが狙いというが、国民の不安を煽り、政府への求心力を高めようとしているのが主な目的なのではなかろうか。

 上記のような行動がミサイルが落ちた時の対策とは、あまりにも国民を馬鹿にしているものではなかろうか。対策がないのでごく一般的な危険な時の対策を並べただけで、作った本人もこんなことがミサイル着弾時に役に立つとは思っていないに違いない。

 それにもかかわらず、4億円近いお金を使ってこのようなCMをわざわざ作ったのは、危機を煽るためとしか考えられない。
 日本より北朝鮮に近い韓国では、「北朝鮮は戦争を望んでおらず、絶対にミサイルを撃ち込んではこない。日本の反応は過剰」と冷ややかな見方が多いそうである。アメリカも圧力をかけても戦争をしない方針を表明している。北朝鮮のミサイルも日本を標的にしているものではない。

 一方、中国に関しても尖閣列島や日本近海の中国船の往来を取り上げては、今にでも中国が攻めてくるのではないかという危機感を盛り上げている。客観的に見て中国が近い将来日本に攻めてくるような兆候はないし、どう見ても軍事力によってしか解決できないような問題は日中間には存在しない。

 政府は嫌中、嫌韓を煽り、それを手掛かりに軍備増強などアメリカの要望に応え、憲法を変え、戦争のできる国にしようとして、近隣の軍事情勢が悪化し、危機が迫っているように見せかけ、国民の不安を煽っているのが現状である。

 現在こそ、むしろ平和憲法を強調し、平和を守る日本の姿勢を鮮明にすることが、北朝鮮のミサイル問題にしろ、中国や韓国との問題の解決にも役立つことは明らかであろう。

 不要な国民への煽動を止め、近隣諸国との話し合いを深め、平和愛好の国民の声を鮮明にすることが今後の日本の発展のためにも役立つのではなかろうか。