日本人の普通の常識から言えば、今回のアメリカの大統領選挙について、トランプ大統領がいつまでも敗北を認めず、法廷闘争にまで持ち込んで不正を主張している姿に、多くの人が異常ささえ感じているのではなかろうか。
しかし、アメリカでは、このトランプ大統領の選挙結果の否定に対する反応は、日本とはかなり違った感じのようである。第一に、多くの日本人はもう選挙が終わったと思っているのだろうが、各州の選挙人の選択が終わっただけで、選挙はこれから選挙人によって行われるのである。選挙のやり方も、社会風土も日本とはかなり異なっていることを知っておくべきであろう。私はトランプ嫌いで、もういい加減に消えてくれないかと思っているが、アメリカの事情はもう少し複雑なようである。
アメリカではウオール街占拠や、1%の人が95%の富を独占していると言われた運動からもわかるような巨大な経済格差に加え、経済成長の鈍化、ラストベルト地帯の貧困、エリート層と低学歴の労働者階級との格差の増大、中流の消失、BLM運動などでもわかるように人種問題、メキシコ国境の壁建設などで象徴される移民問題やアメリカのメキシコ化などが複雑に絡み合って、近年、社会の分裂がひどくなっていることが背景にあるようである。
トランプが大統領になった時には「我々の大統領ではない」というデモが起こったが、今度は選挙の不正の主張が執拗に繰り返されているのである。トランプ陣営が負けたとはいえ、選挙の結果は殆ど拮抗するぐらいの支持者がいたことも忘れてはならない。今なおトランプ支持の運動も続けられている。
もはや一つのアメリカというリアリティがなくなっており、選挙の結果で、敗者が勝者を称えるような時代は終わったとも言えるのではなかろうか。
日本などと社会風土が異なり、不正選挙やそれに類したことははこれまでもしばしばあり、例えば、選挙名簿への登録を拒否したり、投票所を減らして投票所が遠方にしかないようにして、忙しくて時間のない人や、車がない人は遠くて投票に行けないようにするなど、選挙妨害はこれまでもよく報道されて来たことである。
そんな風土の中で、今回の選挙に関しても、トランプ大統領は早くから、郵便投票は不正が起きやすいからとの理由で中止させようとしていた事実などもある。日本とは社会が異なり、選挙以外でも考えられないような不正や陰謀が、平然と行われるようなワイルドな社会風土がアメリカにはあるような気がする。
選挙以外でも、日本では考えられないような陰謀が実行されてきたのがアメリカの歴史だからである。国際的にも、スペイン戦争の時の戦艦ワシントン事件以来、トンキン湾事件、イラク戦争の原爆開発疑惑など、明らかな陰謀が繰り返されてきているし、9.11事件でさえ陰謀説が囁かれている。
そうした突拍子も無いようなことも、決して不思議ではないような風土が日本とは全く異なるので、そのようなことも考慮に入れて判断すべきであろうと思う。