「傲慢」の次が「陰険」

 他人の悪口はあまり言いたくないが、対象が首相であれば、国民の生活の隅々にまで影響を与える立場にあるのだから、民主国家では、国民が、良かれ、悪しかれ、その人物評をするのは当然のことであろう。

 その政治の結果を国民が評価するのは当然のことであろうし、その長である首相の人物が音沙汰されるのも自然の流れであろう。政治家は国民の委託を受けて政治を行うものであるから、国民が政府や、その施策について感想を述べ、それを行う首相の人物評に及ぶのは当然のことであり、政府はそういう国民の声に耳を傾けて、政治を行うべきであろう。

 そういう観点から、この10年足らずの二人の首相を見れば、日本国民は自ら選んだと言われても仕方がないが、ずっと不運というか、不幸な目にあってきたし、今も尚、不幸な生活を強いられ続けていると言わねばならない。

 前任者の安倍首相の時は、8年余りも、テレビなどで嫌という程、長い間、毎回毎回同じ顔を見せられて、もう見たくない、もういい加減に引っ込んでくれと思っていたが、やっと見なくて済んで、せいせいしたと思ったものだが、それも束の間、今度はどんな人物が現れるのかと思っていたら、三白眼の陰鬱そうな男が現れて、これまで以上に憂鬱な感じがする日が続いている。

 これまで官房長官として、いつでも記者の質問に「答える必要はありません」などとすっけない返答を繰り返していた人物である。

 前首相が見るからに、血筋の良い、金持ちの、怖いもの知らずのボンで、嘘でも平気でつく傲慢な人物であったが、今度の首相は、自ら苦労人を売りに登場した人物であるだけに、外見だけでも陰気な策士の感じである。

 国会の答弁一つにしても、前者は嘘を平気で喋り、官僚などにも忖度させて、嘘を嘘で固めてきたが、後者は官僚の助けを借りて、メモを読みながら答弁するだけで、まともに答えようとしない。答弁能力の欠如さえ疑われる。

 言質を取られないように注意しているのかも知れないが、記者会見まで避けて、陰険にもっぱら影で黙って事を進めるのが得意な人物のようである。学術会議会員の任命拒否の問題や、コロナ対策でも、表面的には何も言わず、影で問題をすり替えたり、裏で自分の主張を通そうととしている。

 初めから、この人物はどうも首相の器ではないと思っていたが、誰が見てもそうなのであろう。最近上西とか言うどこかの大学の先生もそう書いていた。コロナのパンデミックで大変な時にも、GoToトラベルを止めようとせず、国民に何も説明しようともしない。

 首相であれば、もう少し前に出て、例えば、嘘でも良いから、「皆で頑張りましょう」とでも言って、国民に直接呼びかけるようなところがないと、人はついてこないであろう。影で何かを画策しているにしろ、前面に立って姿を見せなければ、首相は務まらない。今後が心配である。誰から見ても、首相の器ではないと思わざるを得ない。

 この国の首相が、傲慢な嘘つきボンの次が陰険な”苦労人”では、あまりにもこの国の国民が可哀想ではないかと思うのは私一人ではなさそうである。