大阪市は姉妹都市であるサンフランシスコ市がいわゆる”慰安婦像”を立てることを承認したことに反対して、姉妹都市を解消したそうである。60年以上も続いてきた姉妹都市としての交流をそのようなことで打ち切ってしまうのは勿体ないような気がするが、市長自らが打ち切りを決めたようである。
そもそも韓国だけでなく、アメリカにまで”慰安婦像”が建てられることに対して、”慰安婦”の存在をを否定している大阪市長を含む維新の会や自民党、その他の右翼勢力などは”慰安婦像”があちこちに建てられることに神経質に反対し、その動きを阻止しようとしてきたが、アメリカに建てられる”慰安婦像”は、韓国での問題とと少し事情が違うようである。
アメリカでの建立は直接日本の軍隊に強制された”慰安婦”だけを象徴するものではなく、戦争における性暴力一般を象徴するものとして、その犠牲者を弔い、二度と同じようなことを繰り返さないという願いを込めたモニュメントとされており、そう言われれば、日本の右翼勢力が言う直接軍隊に強制された”慰安婦”がいたかどうかと言う問題とは少しずれて考えられているものなのである。
そうとすると戦争に伴った性暴力全般のあったことを否定するわけにはいかないのだから、過去の事実として受け入れざるを得ないものであろうが、日本の過去のマイナスの歴史を否定したい維新の会などの勢力は何としてもアメリカに”慰安婦像”が増えるのを阻止せんとして、2年前にサンフランシスコで行われた像の建設を許可するかどうかの公聴会に人を送り建設を止めるように訴えた。
ところが、そこには韓国の元”慰安婦”であった人も証言するために呼ばれていた。その場でその証人を前にして、あらかじめ用意していた文をそのまま読んだのであろう「”慰安婦”などはおらず、実態は自ら志願した”売春婦”だ」と言ったものだから、議長がびっくりして、あまりの非礼さに"Sheme on you"と言って、たしなめる一幕があり、それも影響して反対であったろう人までが態度を変えて、全会一致で建設が承認されたと言うことらしい。
それにもかかわらず、サンフランシスコ日本は総理大臣名で市長の権限で建設を止めなければ姉妹都市は解消だと要請していたようだが、この度サンフランシスコ市が正式に”慰安婦像”建立を許可したので姉妹都市解消ということになったのだそうである。
南京虐殺にしてもそうだが、殺された人数が問題なのでなく、大虐殺があったことは否定しようのない事実であるのに、人数の評価で虐殺全体の事実をなかったことにしようとしたり、慰安婦の問題でも、銃剣を突きつけられて慰安婦にされたと言う済州島の事例の誤りを取り上げて、”慰安婦”問題が全てなかったと主張するような、歴史の歪曲は国内ではそこそこ通用したとしても、世界では通用しない。
まずい誤った主張は人々の反発を買い、返って”慰安婦像”が戦時性暴力”のシンボルとしてフイリピンやインドネシアなど日本が侵略した他の国にも広がることにもなりかねないのではなかろうか。
ドイツが今もなおアウシュビッツなどのユダヤ人虐殺の過去のマイナスの歴史に正しく向き合っているように、日本も否定しようのない過去の侵略や加害の歴史には嫌でも正しく向き合わなければ、やがてこの国は世界の孤児にならざるを得ないのではなかろうか。