憲法改正より先に地位協定改正を

 安倍首相は今年度の国会の開催なあたり、「いよいよ憲法改正を実現する時を迎えている」と述べ、強い意思を示した。自民党の総裁であるにしても、本来憲法を守らなければならない行政府の長である、同じ人間である首相が、憲法を変えようとする勢力の先頭に立つのはどうかと思うが、今年こそ積極的に憲法改正を発議しようとしているようである。

 安倍首相に言わせれば、憲法は「国の形、国の理想の姿を示すもの」だというが、憲法が国民が政府を縛るものだという憲法を無視して、政府が政府に都合の良いように国民を統制するものに変えようとしているのが政府の憲法改正の中心的な狙いである。ただ、先ずはどこからでも改正することに意義があるとし、わかりやすい自衛隊の軍隊としての承認や、非常事態時の特例など可能なところからでも始めようとしているようである。

 しかし憲法が首相の言うように国の形を示すものだとしても、その憲法よりも上位の法律があり、それが憲法に制約を加えるようであれば、憲法で国の形を決めることさえ出来ないのではなかろうか。現に日本は日米安保条約を結び、今だに米軍の駐留を認め、米軍との約束が憲法より上位にあり、そのため我が国の主権が甚だ侵害されているのが現実である。

 例えば、東京の上空ですら米軍との約束で日本の制空権が奪われているし、米軍の飛行機は日本国中自由に飛び回ることも出来る。アメリカ大統領の日本訪問は横田の米軍基地から始まっている。沖縄では米軍用機による事故が2017年だけでも25件もあり、それの対する日本側の要請は常に無視されているという事態が続いているのである。日本は未だに占領時代に似た米国の従属国に甘んじているのである。

 これをそのままにしておいて憲法改正をしても政府は国民を守ることは出来ない。不平等な条約を改変して、真の独立国になってから憲法改正を考えるのが筋道であろう。戦後に吉田首相が今の憲法を認めたのも占領が終わって日本が独立してから変えれば良いと考えたからだという話もあるようである。

 憲法改正よりも先に、国民の命を守るためにまずは日米地位協定の改正を行うことが政府の喫急の優先課題ではなかろうか。他国とアメリカとの間の似たような協定と比べても日米の地位協定は不平等なようである。しかも、他国が交渉でそれらの協定の見直しをしているのに、日米の間ではまだ一度も改正が行われたことがないそうである。

 北方4島に問題が解決できないのも、米国が日本のどこにでも基地を建設する権利を持つているので、ロシアが米軍基地が出来る可能性のある場所をわざわざ日本に提供するわけがないことでわかる。

 日米間の友好関係を損なわずに、地位協定を今少し独立国同士の平等な協定に変えていくことが国民を守る一義的な責任のある政府のとるべき所作ではなかろうか。憲法は日本が独立国家になったから変えても遅くないが、地位協定の改正には直接多くの日本人の日々の生活や生命がかかっていることであり、実現可能なことでもあり、ぜひ優先させてほしいものである。